このレビューはネタバレを含みます
イラン麻薬捜査線 善悪、足掻く者たち
2019年の東京国際映画祭で最優秀監督賞と最優秀男優賞を受賞し、映画祭前にはラジオ「アフター6ジャンクション」でも映画祭シニアプログラマーの矢田部吉彦さんが推されていてどうしても観たかった一本。
イラン映画なんてほとんど観た事がなかったし、「イラン映画」というだけで一個ハードルが上がるんだけど、それで観ないのはもったいなさすぎる作品だった。
冒頭から怒涛の展開で、突如として突き落とされるようなオープニングのシークエンスから、貧民窟と化している土管置き場とそこに住むホームレスの人数の迫力に驚かされる、この人数の迫力はこのシークエンスのみならず、その後の刑務所という密室空間のなかでも存分に味わうことができる。現在の視点から見れば実に“密”な画が多い映画である。
主人公が麻取の刑事からディーラーの男に切り替わっていく展開は本当に予想不可能で、最終的にはこのディーラーの犯罪者に対して同情すら抱くほど。
また麻取の刑事がむかえる大オチはイランの現在が映し出され、なんとも言い難い衝撃を受ける。にっちもさっちもいかないイランの現状で善悪双方の立場でなんとか抜け出そうと足掻く者たちを描いた傑作!