Melko

わたしの叔父さんのMelkoのレビュー・感想・評価

わたしの叔父さん(2019年製作の映画)
3.9
「なんであの人を?」
「体操をしないと衰えてしまうからさ」
「私がいるでしょ?」
「お前もいつか別の道へ…」
「別の道って?」
「分からんが、一生ここにはいないだろ?」

「家に入って」
「見送るよ」
「(心配で)気になっちゃう」

私の叔父さん
じゃなくて、私と叔父さん だわね、コレは

私の居場所
存在意義を感じる場所/必要とされている自覚と、自分が本当にやりたいこと/なりたいもの
立ち止まって考える暇がなかったぐらい、脇目も振らずに手伝って生きてきたんだろうな…

うーん、そこで終わるのかぁ、、なるほど

母を10代で亡くし、弟と父を自殺で亡くし、1人になったクリス
そんな彼女を引き取り育ててきた、足の不自由な叔父
二人三脚で営む酪農 一日ずつを着実に。淡々としたルーティーン
牛の乳を絞り、牛舎を掃除、時には逆子の出産を手伝い、トラクターを乗りこなす。その作業は過酷。
華奢な体の女子だけど、クリスはこなしてきた。叔父の介護もその手でこなしてきた。

ホントは何になりたかったんだっけ
興味のあることにのめり込む姿勢、叔父への後ろめたさ
好意を寄せてくれる男性、まっすぐな愛、その胸にまっすぐ飛び込めない臆病さ

口数少なく、表情も固い
一見、ドライで現実的でいて、かなり色々拗らせてるクリス
でも分かる。私、分かる気がする
もう誰も家族を死なせたくない。たった1人の家族である叔父さんが、電話に出ないだけで死ぬほど心配する気持ち
離れて住む母親がコロナで倒れた時、久々にかなり慌てた。そばに居ないから状況がわからない。幸い、近くに住む叔母夫婦が色々してくれて何とかなったし、私自身は弟と遠隔で救急車の手配をしたり、母親に電話をかけ続けたり協力できる人が近くにいた。
それが、誰もいなかったとしたら。

めちゃくちゃ不安になるし、やっぱり、やりたいことや夢を後回しにしたり諦めたくなるぐらい、悲しくなると思う。
自分の人生だから
って、そんなの分かってる。でも、自分のことを優先して家族にもしものことがあったらと思うと、やり切れないと思うもん。家族はそれで自分を恨んだりしないって分かってたとしても。

当たり前のことをマイクに言われて、怒っちゃったクリス
その気持ちもよく分かる

でも、叔父さんは終始「〇〇しちゃダメ」とか「〇〇すべき」ってクリスに言わなかった。クリスから「私は〇〇したい」「〇〇へ行きたい」って言われるのを、待ってたんだと思う
だって、クリスの人生だもん

独特の間があった2人
空間を埋めるテレビが映らなくなり
本音で語り合う時間かしら
演じた2人は本当の姪と叔父で、クリス役の女優は昔ホントに獣医をやってたんだって。
だからあの慣れた手つきだったのか

一応ケータイ持ってるけど、連絡つかない女子
なら手紙で愛を伝える
マイクの想いは届くのか
ホントにやりたいことと、家族を大事にする気持ちを別に考えられる時が来たら、その時は。

劇伴は、風や牛の鳴き声、生活音に食事の音など、自然の音のみなのは良かった
Melko

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