すずき

ラ・ジュテのすずきのレビュー・感想・評価

ラ・ジュテ(1962年製作の映画)
3.5
少年は、第三次世界大戦開幕の直前に見た光景が目に焼き付いていた。
名も知らぬ女、駆け寄る男、銃声、爆撃機の轟音。
世界を焼き尽くした戦争が終わり、大人になった彼は、ある実験の被験者となる。
その実験とは、この世界で底を突きかけている物資やエネルギーを、過去・未来から持ち帰るというタイムトラベル計画。
計画の第一段階である過去へと飛んだ彼は、そこであの日に見た女性と出逢い、恋に落ちる…

30分にも満たない、62年のモノクロSF短編。
テリー・ギリアム監督の「12モンキーズ」の原案となった作品。
映像はワンシーンを除いて、モノクロ写真の静止画の連続。
近未来である作中の「現在」の様子はほとんど映されず、廃墟のような実験場だけが描かれる。
低予算な作りだけど、静止画で被写体以外のものを映さないからこそ、画面の外側を想像させ、古さを感じさせなかった。

ストーリーには目新しさや意外性はないけれど、短編作品としては十分かな。
設定こそSFではあるけれど、幻想小説のような、夢の中を彷徨うような雰囲気を楽しむ作品。