さすらいの旅人

約束の宇宙(そら)のさすらいの旅人のレビュー・感想・評価

約束の宇宙(そら)(2019年製作の映画)
3.5
宇宙飛行士を目指すシングルマザーの苦悩を描く映画
【BS/WOWOWシネマ/録画視聴/ビスタサイズ】

シングルマザーの仕事と育児の両立の葛藤をリアルに描くフランス映画。
本作では女性宇宙飛行士という限られた職業世界の話であるが、根底に流れるのは何処にでもある親と子の絆だ。

宇宙飛行士の厳しい訓練と隔離生活は親子を断絶させる。別れた旦那も頼りなく、子供は段々孤立して行く。たまに会える機会の子供の嬉しそうな顔が印象的だ。
ただ、この映画の良い点は親子が離れ離れになるが、子供が徐々に成長して行く過程が丁寧に描かれている事だ。つまり「親は無くとも子は育つ」のことわざの通り、そんなに心配しなくても大丈夫という事。世界共通である。

主演のエバ・グリーンがいい。子供を心配しながら挑む訓練の姿には、母親としての辛さと宇宙への希望が入交り、苦悩する女性を見事に演じていた。子供役のゼリー・ブーラン=レメロは可愛らく、感情豊かな演技をしていた。アメリカの飛行士役のマット・ディロンは母親に気を使う優しさの反面、厳しさでも圧倒的な存在感があった。

あと、宇宙飛行士の訓練内容が予想に反して恐ろしく厳しいことに驚いた。水中での秒単位の作業や着陸してからの模擬訓練など辛そうだった。本作は親子の人間ドラマとして感動できるし、宇宙飛行士の訓練の過程が大変興味深かく観られた。

ただ、ラストの親子の行動は、最大の見せ場だと思うがいただけない。普通に考えれば明らかにおかしい。今までの苦労をぶち壊す行動は興醒めだ。他のシナリオででうまく回避してほしかった。