シネラー

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのシネラーのレビュー・感想・評価

5.0
MCU第27作目であり、
MCU版スパイダーマンの3作目となる
本作を公開初日に鑑賞。
長く待ち望んだ作品だったが、
自分の期待通りの作品ではなかった。

大きく自分の期待や想像を越える、
スパイダーマン映画の最高傑作だった。

前作でスパイダーマンの正体を
世界中に知られてしまったピーターが、
ドクター・ストレンジに助けを求めるも
別次元であるマルチバースの侵食という
危機を生んでしまい、事態の収拾へと
奔走する内容となっているが、
MCU版スパイダーマンの完結でありつつも、
新たな始まりを感じさせる印象を受けた。
スパイダーマンにとって大切な
「大いなる力には大いなる責任が伴う」
という言葉がピーターに重くのしかかる
展開となっており、
アベンジャーズの後ろ楯や周囲の仲間達
の存在によって、孤独なイメージの薄い
MCU版スパイダーマンが、
本作の最後の決断によって正にヒーロー
として独り立ちしたと感じられた。
主役であるピーター以外の人物描写
もしっかり描きこまれており、
ピーター、MJ、ネッドの友情や
メイ叔母さんの存在、
前作までの積み重ねを見事に本作で
昇華させていると思った。
特にメイ叔母さんとハッピーの言動には、
涙が溢れてしまった。

過去のMCU版以前の
スパイダーマン映画のヴィラン達が
勢揃いするという展開は、
アベンジャーズが集結する以上に夢の
共演だと言えるだろう。
その展開で上手く盛り込まれた
マルチバースという設定は、
アメコミらしさを感じるのと同時に、
スパイダーマン映画を紡いできたから
こその描ける内容だと思った。
グリーンゴブリンやドック・オクを
再び同一キャストの同じ設定で
観られる事には、サム・ライミ版からの
ファンとして喜びしかなかった。
そんな彼らを助けようとするピーターの
行動には、サム・ライミ版や
マーク・ウェブ版でそのヴィランを
救えなかったという、
言わばそれぞれのシリーズの
救済とも言える優しさが感じられた。

アクションに関しては、
中盤で意見の相違から対立する
スパイディ対ストレンジが視覚的に面白く、
ストレンジの魔術に対する攻略法が
何ともピーターらしいと思った。
そして、最終決戦の地となる
自由の女神での戦闘も素晴らしいが、
戦闘の合間で交わされるヴィラン勢との
会話劇や戦いの最中で危機に陥るMJ
といった場面は、
感慨深くなる要素に溢れていて、
本当に涙ぐましい最終決戦でもあった。

ピーターの幼さ故の行動が目立つ事で
物語としての拙さや
説明不足な展開を感じない訳ではないが、
そんなものは微々たる不満点と言って
良いだろう。
しかしながら、
ファンが喜ぶ要素に富んでいる分、
一本の映画としての質に疑問がない訳
ではなかった。

"エンドゲーム"を鑑賞した際、
アメコミ映画で大いに感動する事は
数年はないだろうと思っていたが、
本作は"エンドゲーム"と同等以上の
感動を与えてくれる大傑作だった。
約20年間、スパイダーマンを好きでいて
良かったと思わせてくれた、
夢に溢れる映画だった。
シネラー

シネラー