ブラックユーモアホフマン

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホームのブラックユーモアホフマンのネタバレレビュー・内容・結末

4.7

このレビューはネタバレを含みます

すごすぎ。
まさに実写版スパイダーバース。

少年のスパイダーマンが乗り越えがたい人生の危機に面した時、別次元から来た先輩スパイダーマンたちのサポートによってまたスパイダーマンとして磨きがかかる、という話の構造も同じで。

正直、アンドリュー・ガーフィールドとトビー・マグワイアも出るんだろうなとは思ってたよそりゃ。でもいざ実際に出てくるのを見るとびっくりするし、感動で震えた。
こんな絵面が見れるとは、信じられない喜び。いい時代に生きてるわ〜。

メイおばさんが死んでしまうくだりからずっとウルウルはしてたけど、トビー・マグワイアの顔を見た瞬間に泣いてしまった。
子供の頃から、ちゃんと見てはいなかったとはいえ、やはりスパイダーマンといえばトビー・マグワイアだという刷り込みがある世代だから、だろうか。改めて観て、サム・ライミ版こそがスパイダーマンだな、という認識が強まったからだろうか。分からないけど、とにかくトビー・マグワイアが登場して泣いてしまった。

『X-MEN:フューチャー&パスト』の感動にも通ずる。上手くいったもの、いかなかったもの、シリーズが続くと色々あるけど、その歴史すべてをひっくるめて肯定するような作品。あんなに面白かった1,2があっての3のあの感じで終わってしまっていたトビー・マグワイア版をやっぱりそれでもマスターピースだよなと思い出させてくれた感じがする。

トビー・マグワイアが三人の中でもダントツで冴えない。一番「実はボクがスパイダーマンなんだ」って言われてびっくりするピーター・パーカー。アンドリューとトムホはそう言われても何となく「あ、そうなんだ」って受け流せそうだけどトビーピーターだけは「嘘つけ!」って返すと思う。だからこそ完璧なピーター・パーカーなんだよな。

でもピーター・パーカーとしてのアンドリュー・ガーフィールド、久しぶりに見たけどやっぱりカッコいいな。個人的には3人の中では圧倒的にカッコいいと思う。アンドリューピーターもやっぱり彼は彼ですごく好き。

悪役たちを「CURE」してあげるっていう話自体も感動的。トビーピーターもアンドリューピーターも、本当は戦いたくなかった人とやむにやまれず戦って、結果殺してしまって。そういう悲劇的な物語こそがスパイダーマンの魅力でもある一方で、ハッピーエンドを迎えないままシリーズが終わってしまったトビー版とアンドリュー版に関しては特に消化不良感というか物悲しさばかりが残っていた。それをまとめて払拭してくれるMCU。すげえことしたよ。

中でもやはりノーマン・オズボーン=グリーンゴブリンがメインヴィランだってのはもう納得すぎるし最高。そしてウィレム・デフォーってやっぱ世界一の俳優だわ。『ライトハウス』でも見られたあの顔芸と声芸。あれ、サム・ライミ版一作目だとずっとマスクつけてるから分からないけど、絶対マスクの下でもあの顔芸やってたんだよデフォー。
ただ最後、正気に戻ったノーマンがトビーピーターやトムホピーターに謝罪するなり何かしら言葉を交わしたらよかったのに、とは思った。何もなかったのが寂しかった。

あとこちらは何の理由もなくJ・ジョナ・ジェイムソン役がJ・K・シモンズなのも最高。でもサム・ライミはJJJで必ず笑いを取っていたけど、本作のJJJは少なくとも笑えるところは全くなく、ただの嫌なヤツになってたのは残念だった。

悪役軍団(シニスター・シックス作れそう)が揃うのも圧巻だけど、全員当時のキャストがそのまま演じてたのも最高。しかしジェイミー・フォックスのあの見た目の変更は何?真っ青でいいじゃん。せめて人間の姿にしてもあのバーコードハゲじゃないと。さすがに違う人じゃん。

そしてジェームズ・フランコのことは救ってあげられないね。それは仕方ないけど寂しいな。セクハラが告発されてもう表舞台に立てなくなってしまったから。でもいつかそこも含めて救ってくれたらいいのにな、なんて思ってしまった。もちろん彼がしたことは酷いし大いに反省して償うべきだけど。
あと誰も覚えてないデイン・デハーン。一番可哀想。最近なにしてんのかな。

エディ・ブロック(トム・ハーディ)&ヴェノムも来てたみたいだけど、あの扱いは最高だねw 完全にギャグ映画の扱いだな。そして最後にちょっとシンビオートを残していくのも上手いよな~。これで、あの可愛いヴェノちゃんじゃなくて、ちゃんと凶悪なMCU版ヴェノムができるってことね。

しかしピーター・パーカーがスパイダーマンだってことを知ってる人があのユニバースに集まってきちゃったってんだったら、あのエディ・ブロックが来るのは何故か分からないな。それにキルステン・ダンストMJとかだって来ていいはずだし。
そういう展開になるまでのくだりもちょっと無理がある。ドクター・ストレンジほど聡明な人があんな凡ミスするかね?っていう疑問もあるし、ちょっとこういう展開にしたいっていうメタな都合が見えてしまったけど、まあそんなことは補って余りある素晴らしい内容だったのでさほど気にしてないです。

もうみんなみんな大集合したお祭り映画でした。こんな体験できることなかなかないもの。ありがとうマーベル。ありがとうソニー。ありがとうディズニー。資本力の凄まじさを見せつけられてるような気もして複雑ではあるけど。

しかしメイおばさんまで死んでしまうとはなあ。トムホピーターが実は一番しんどいんじゃないか。登場時から既に両親とベンおじさんはいないし、師匠のトニー・スタークも亡くし、遂にメイおばさんまで……更に恋人や友人、アベンジャーズにも自分の存在を忘れられてしまう。『エターナル・サンシャイン』を思い出したりもした。切ないけどワクワクする。これからどうするのか。また楽しみだなあ~。

そこからのクレジットも超お洒落で良かったね~。今までのMCUのエンドクレジットの中で一番好きかも。デ・ラ・ソウルよ!!聴いたことなかったけど超絶カッコいい。あとオープニングもトーキング・ヘッズの「I Zimba」から始まってメチャ良かった。年末に『アメリカン・ユートピア』観たばっかで自分的にもホヤホヤだし。

MCUスパイダーマン3作のポスターを並べて見て、一作目はトニー・スターク、二作目はニック・フューリー(じゃなくてタロスだったけど)、三作目はドクター・ストレンジと、必ずメンター的おじさんがMCUの他の作品から一人ずつ出てるっていうのも綺麗な構成ですごいなと思う。

願わくば、スタン・リーが生きてカメオ出演していれば完璧な映画だった……。

最近、フェーズ1の頃はそれこそサム・ライミ版『スパイダーマン』みたいな、単体のヒーロー映画なんだろ?と思って観ていた映画が実は世界観を共有していてそれぞれのヒーローたちが集結するらしいぞ……というワクワク感があって、それこそがMCUの魅力だと思ってハマったんだよな、なんなら『アベンジャーズ』で完結するもんだとすら思ってたな、と思い返して、あの頃のワクワク感ってもうどっかいっちゃったよなー、あのワクワク感を超えるものってもうないのかな、と寂しくもなった。『エンドゲーム』にはしかし驚かされたなと思い、でももうこうなっちゃったらMCUさすがに驚かし方無くなったでしょと思ってたら、本作はまた驚かしてきた。恐ろしすぎる。そしてまた、もうこれを超える驚きはないだろうとやっぱり思ってしまうのだけど、杞憂なんだろうな。MCUはまた驚かせてくるんだろうな。恐ろしい。

でも『ホークアイ』に出てきたブロードウェイ・ミュージカル「ロジャース」の看板があって、あと序盤ハロウィンシーズンだったから時系列的には『ワンダヴィジョン』と同時期なのかな?と思い、最後のシーンで『ホークアイ』最終話のあのビルとクリスマスツリーとスケートリンクが出てきたからあの日より少し前なんだな、とか思ったりして、結局これフェーズ1の頃のワクワク感に近いじゃん!とも思った。

そしてこんなすげえ映画から、登場キャラクターのその後の話だから直接の続編だとも言える『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』に繋がって、しかも監督がサム・ライミという流れの美しさ。恐ろしすぎるって!!

ちなみに『ホークアイ』にヴィンセント・ドノフリオ演じるキングピンが出てきて、初登場?と思ったら『デアデビル』に既に出ていたんだということを知り…というルートでマット・マードックが本作に出ていることはネタバレを踏んでしまって知っていたのだけど、ほんの少しだけのことだったから良かった。あれはでも多分、「Netflixのドラマシリーズとか見てきてない人たち、観といた方がいいよ…?」というマーベルからの目配せと受け取った。ので、これからちまちま見ていこうと思う。

【一番好きなシーン】
・路地裏でゴブリンと話すノーマン
・オクタヴィアスを治すシーン
・ゴブリン再覚醒からのアクションシーンからのメイおばさん
・トビー・マグワイアが登場した瞬間
・アンドリューピーターがマックスと和解した瞬間
・アンドリューピーターがMJを助けた瞬間
・消えていく中、お互いに手を挙げて別れの挨拶をするアンドリューピーターとトビーピーター
・最後のカフェ