公開まで長かった。そして素晴らしかった。
クッキーとキング・ルー、どちらも社会に馴染めなかった者同士。そんな2人がドーナツ作りで一発逆転を狙うが…という話。
ヒーローになる物語じゃない。
ケリー・ライカートの作風はいつも一貫している。これまで同様、歴史の隅に埋もれてしまっている市井の人々の人生を掬い上げる。
光の当たらない人を静かに見つめるような、だからこそ自分はケリー・ライカートの作品が好きなんだと思う。
冒頭の船の場面や散歩する犬と女性だったり、ケリー・ライカート作品の集大成のようにも感じられた。
初めは成り行きだったし打算もあったかもしれないけど、2人の間には確かに絆があった。それがはっきり分かる場面があの結末に繋がっているのは残酷だし皮肉的。
優しく美しい終わらせ方も鳥肌立ったくらい良かった。
観終わった後も続く余韻が心地いい。