ヴィクトリー下村

ありふれた教室のヴィクトリー下村のレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
3.9
面白かった。
終始スリリングな展開に引き付けられっぱなし。99分という短さも見やすくて良い。

個々の間で起きてた問題がどんどん拡散して引き返せないところまでこじれていく。生徒たち、彼らの保護者、気の合わない同僚、カーラを取り囲むあらゆる環境が彼女を追い詰める。
これは観ていてしんどい。

彼女が自分のクラスに入っていく場面が何度もあるんだが、後半に進むにつれて観てるこちらの心拍数も挙がっていく。可愛かった生徒たちも次第に怖くなっていく。

組織というか集団の人間の怖さも描かれていて、個人個人だと対話の余地があるのに、組織になると途端に壁のようなものに阻まれてるような感覚もあった。

カーラが間違ってるとは思わないし正しいと思うけど学校側の考えも共感できる。
「そうは言ってもどこかで折り合いつけないといけないじゃない」という場面はあるからね。
悲しいかな、理不尽を受け入れることが社会人になると刷り込まれてしまった…

カーラを演じたレオニー・ベネシュの演技が素晴らしく彼女の表情や言動がより緊迫感を上げて観る人を引き込んでいく。

序盤のオスカーの証明が中盤以降ではひっくり返る展開(1と0.999が=といっていたのに対し限りなく黒に近いグレーと黒は違うと主張する辺り)は「上手い」と思った一方、リアリティのある作品だからこそ作為的にも感じられたな。

ルービックキューブもいかにもという感じなんだけど、それでも最後のルービックキューブの場面は良い。

彼らを取り巻く状況は最悪だしお互いに譲れない部分はあるけど、2人は同じ方向を向いてるんだと信じたい。