ヴィクトリー下村

霧の淵のヴィクトリー下村のレビュー・感想・評価

霧の淵(2023年製作の映画)
3.8
鑑賞後に知ったが、本作の舞台となっている川上村は2018年には人口減少率では全国でワーストになってしまった村とのことらしい。

そんな本作は、村の記憶をさまよう幻想譚であり静かな終わりを辿る物語となっている。

全編にわたり静謐な雰囲気に包まれた83分だった。

風の音、森にかかる霧、透き通った川、美しい自然の姿やそこで生きる人々の姿はノスタルジックな気持ちにさせる。

何でも村瀬監督たちは実際に川上村に長期間滞在して撮影に臨んだということで、劇中の川上村からは、いわゆる「観光映画」以上に踏み込んだ距離の近さを感じた。

本作の特徴として直接的な表現を避けているということが挙げられる。
冒頭のイヒカの母と父の離婚話もそうだし中盤でイヒカ一家に起こるある出来事もそうだ。

インパクトのある出来事を直接描写しないことで静謐な雰囲気を最後まで保っている。

本作に関しては村瀬監督のコメント通りの内容になってると思っており(つまり監督の意図通りの作品になっているのだと思う)、自分も見終わった後に静かな終わりを琥珀に閉じ込めたような映画だと感じたのだった。