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ファースト・カウのCookieMonsterのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
3.8
リュミエール兄弟のシネマトグラフを想起させるように、一隻の船が左から右へ横切っていく
2体の白骨体から、物語はアメリカ開拓の時代に遡っていく
物資は貧困で、人々は道なき道をいき、夜は暗い
ただ希望だけはある

主人公たちはアメリカで共にストレンジャーだ
料理のできるクッキーは若干スローで仲間からも見捨てられ、キングリーは中国という出自から孤立している
食べ物によって救われ、繋がれた2人が、食べ物によって成功を掴もうとする
しかしその計画は杜撰で、行先は暗澹としながら、2人はそれに縋るしか手立てがない
それだけでも寓話的要素が散りばめられている

一頭の牛は金持ちの象徴であり、ビジネスチャンスだ
もしかするとファーストペンギンに準えて、そのチャンスに飛び込む2人の無謀さを讃えるようでもある
甘いものにはいつだって需要がある
客たちはその蜜に吸い寄せられ、主人公たちはそれで得た金で夢をみる
甘い誘惑

それでも2人は金によって繋がっているわけではない
劇性を排した静かな描写、生活の会話の中で、それは育まれていく
ささやかなミスを互いに責めることはなく、見捨てることもない

物語は環状になり、やがてはじまりに帰る
そしてその静けさにほっとさせられる
あれは悲劇ではなく、観客にとって幸せな結末であり、どこで物語を終えるか、をケリー・ライカートは知っている
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