しゆ

SKIN/スキンのしゆのレビュー・感想・評価

SKIN/スキン(2019年製作の映画)
4.5
冒頭に「実話に着想を得た物語」の文字。よく出来てる。『スキン 短編』から続けて鑑賞。あっちは白人側がどうしてファシズムに至ったかの事情をあえて描写しないことで古くからの根深い確執・因縁を断片的に示唆してたけど、本作は白人至上主義団体と黒人グループの激しい抗争から始まり、そこに所属する白人主人公を主軸に、ある家族と出会うことで更生の道を歩もうとするも追手に阻まれるという個人を単位にしたスケールでレイシストの人生により密着した形で描かれる。作品間で直接の繋がりはないけど奥さんのダニエル・マクドナルドが違う役で続投する。''サーフィン''も健在。
単なる対立の構図を描くにしてもシングルマザーの家族を黒人にしないことにこそ意味があると自分は思ってる。肌の色を共通の差別対象にしてるのに団体内で意見が揉めたり脱退のけじめがあったり、もちろん同じ白人でも反差別を掲げたり関わろうとしない人々も大勢いるわけで、生まれる敵は何も黒人だけじゃないのが''差別''による弊害と不幸の広がりを克明に映し出していて奥深い。
でも終盤はとにかく生きててくれて本当に良かった。更生って簡単に言うけどとてつもなく難しいだろうし同時に人の良心を信じてみたい気持ちもある。短編があんなに絶望に打ちひしがれる結末だったから差別の暗喩が込められたタトゥーが消えて希望のある幕引きに一安心。彼がこれまでしてきたことは改心したからじゃあ許される!ではないけど人種差別以上に人は変われることを確固たる姿勢で提起してくれた製作陣の想いに感激する。
今回は人種差別がテーマだったけどマルコムXの「前科者であることは恥ではない。犯罪者であり続けることが恥だ。」の言葉がまさにふさわしい。
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