りっく

ひとつの太陽のりっくのレビュー・感想・評価

ひとつの太陽(2019年製作の映画)
3.8
出来損ないの次男を見捨てた父親と、刑務所に入れられた後に人生をやり直そうとする次男の確執と歩み寄りを軸にした家族の物語は、この二人の距離感によって展開が大きく転がっていくのが面白い。

太陽は全ての人に平等だが、陽の光を遮るような場所を持っているかどうか。日陰を歩むような人生を送る次男と対照的に、一見すると日向を歩んでいる長男の優等生的な人生も過度な期待とプレッシャーを一身に背負い逃げ場がない。

作劇的にも大きな転調となる長男の物語からの退場は、家族で最も問題を抱えていなさそうだと思い込んでいただけに、そのサインを見逃していたのかと、残された家族と同様に観客をも動揺の底に落とされる。

特に音楽がセンチメンタルすぎる印象を受けるが、青や赤を基調としたナイトシーンなど絵作りも美しく、父親がもう1人の息子の人生のために自分の手を汚す不器用な愛情が静かな感動を生む力作である。
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