家族を描く物語には、自然と目頭が熱くなります。ひと夏の幾つかの別れを経験した姉のオクジュ。小さな弟のように素直に喜びや悲しみを表せたらどんなに楽になれるか。誰もの気持ちが痛いほどわかるから、自分の気持ちを押し殺してしまう。いちばん家族を思っているのは、私、とオクジュの心の叫びが聞こえてきそうでした。
弟も意味はわからなくても、自分が道化ることで、家族に漂う緊張感をほぐしてきたのでしょう。
大人になれば覚悟するいくつもの別れ。まだ娘のオクジュには一つ一つが痛くて辛いもの。オクジュが別れていちばん辛かったものは自分の幸せな子供時代でした。
離婚、事業の失敗、引っ越し、家族の死…乗り越えて大人に近づいたけど、甘えられないオクジュ。人生の夏時間は短いから、いつか素直に気持ちを表せる日が来ますように。
胸がつまりました。
