もちもち

ジェントルメンのもちもちのレビュー・感想・評価

ジェントルメン(2019年製作の映画)
5.0
狡猾さとカリスマ性で一代にしてロンドンの麻薬王となったミッキー。彼の引退の噂が流れたことからロンドン中のワル達が動き出す。強欲なユダヤ人富豪、ゴシップ紙の編集長、ゲスな私立探偵、チャイニーズマフィア、下町の悪ガキ達。様々な思惑が交錯するダーティーでスリリングな駆け引きが繰り広げられる。これぞガイ・リッチーというらしさが全面に溢れ出る犯罪群像劇。ユダヤ人富豪のマシューに麻薬ビジネスを売って穏便に引退したいミッキーだったがそうはいかず、二転三転。様々な登場人物達が徐々に交差していき、最終的にどんでん返しに次ぐどんでん返しへと繋がっていく。私立探偵のフレッチャーがミッキーの右腕レイモンドに組織を潰すようなネタを握っているとゆすりをかけるところから始まり、2人の会話劇を軸に回想のように過去の物語が挿入されていく構造。序盤は登場人物達のキャラクターや関係性、思惑などの整理で少し難しく感じるが、ごちゃごちゃしつつも徐々にテンポアップしながらラストへと集約していく様は圧巻。
やはりこういう群像劇においてガイ・リッチーの右に出る者はいない。オープニングで見せたミッキーが殺されるというミスリードが絶妙に上手い。最初に見せられたことで、どうしてもそのラストを意識しながら物語を追わざるをえない形に持ち込まれ、見事に裏切られる。撃たれたけど実は生きてた、とかじゃなく血しぶきしか見せてないけど絶妙に騙されるのがほんとに上手い。派手なアクションやスプラッター描写とかもないけど、会話劇と共に緊張と緩和が絶妙にミックスされ、音楽や映像の細かくおしゃれな演出が光り、最後までずっと面白い。登場人物はみな個性的でクセがあり魅力的。ミッキーの冷酷さがチラッと見えるカリスマ性溢れる雰囲気、レイモンドの有能で頼れる右腕感、フレッチャーのいやらしいねっとりした狡猾さ。さらに下町のチンピラ達のコーチもいいやつだけど意外とエグいこともやる、凄くいいキャラだった。イケオジ達が入り乱れる「スナッチ」や「ロック・ストック〜」の初期作を彷彿とさせるしっかりと脚本が練られた完成度の高い作品。
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