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劇場版「鬼滅の刃」無限列車編のyuiのレビュー・感想・評価

4.5
漫画やアニメが子供のものだなんていう前時代の雰囲気のかすかな残り火を、完全に消し去っていくような今日この頃の勢いには目を見張るものがある。
決して流行りだから流行っているのではなく、人の心を動かし力を与えるメッセージ性やキャラクターの人柄など、様々な魅力に引き込まれる人があまりにも多いのだろう。

本作品はアニメ「鬼滅の刃」第一期の続きとなるエピソード。無限列車に乗り込んだ炭治郎、善逸、伊之助、禰豆子は、炎柱である煉獄杏寿郎と共に鬼に立ち向かうことになる。
十二鬼月の下弦の壱、魘夢の能力は「夢」。
術にかかり夢へと落ちた炭治郎の眼前に広がる世界には――


ギャグシーンこそあるけれど、鬼滅の刃は決して明るく楽しく幸せな作品ではない。
しかし暗いとか、ネガティブなどとは全く違う。
言うなれば「一緒に前を向いてくれる作品」だ。

悲しみの泥のなかに咲く花、アスファルトを砕く生命の強さを讃えるというような作風が、折れそうな心に寄り添うような優しさを伴って我々の胸を打つ。
皆悲しいからこそ、皆辛いからこそ、こういう作品が必要なのだと思う。

どうにもならない悲しみがあること。弱さを認めること。強い自分になりたいこと。きっと強くなれること。
人生、苦しくとも、寂しくとも生きていかなければならないこと。
それらをすべて否定せずに真っ直ぐ受け止めて、前を向かせる。まだ頑張れるかもしれないと思わせる。こんな作品が見たかった。
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