KnightsofOdessa

蜘蛛のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

蜘蛛(2019年製作の映画)
2.0
[全てをぶち壊した三角関係設定] 40点

ピノチェト時代に社会主義やマルクス主義を嫌悪し、人を殺すことも厭わずに抵抗すること。そして、現代において他者の思想や文化に不寛容で"チリ人によるチリ"を取り返そうとすること。これら二つの"思想"(事実は考えない)は本質的にはなんの違いもないが、多くの場合前者は肯定され、後者は否定される。この違いについて肉薄しようとした作品であることは明白だし、いくらでも傑作になり得たのに、映画はくだらないロマンスをベタ塗りすることでロマンス映画の顔をして、問題提起だけして逃げ去ってしまう。これってどうなのよ、と言うのは簡単だからこそどんな形であれ解決策を提示して欲しいんだけどなぁ。強権的で阿呆な金持ち、搾取され続ける"学のない"貧民、そしてその間を揺れ動く女という構図は寓話的だが、金持ちの息子が無個性すぎて揺れ動く意味が分からない。あのキャラ設定は棄てられる男のやつな気がするけど、プログラムがバグったんか?短気で軍を辞めさせられるほどってよっぽどだけど、金持ちに煽られてもちょいギレで首締めるくらいだし、頻繁に現代と過去を往来するせいで女の真意も見えてこない。これじゃあダシに使われたピノチェト時代に苦しんだ人々が可愛そうっすよ。

息子が"パンがなけりゃお菓子でも食うわ"に次ぐバカ台詞"国が社会主義のままで高校いけなくなったらマイアミの公立高校行きますわ"って言ってて、ナメ腐ってたのは良かった。予防医学にまつわるエトセトラを見ているようで爽快だった。
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