meguros

General Magic(原題)のmegurosのレビュー・感想・評価

General Magic(原題)(2018年製作の映画)
4.0
1989年、当時インターネットもガラケーも存在しなかった時代にスマホのコンセプトを完成させていたAppleの子会社・General Magic. シリコンバレーの歴史上最も才能溢れるチームと形容され、後のテック産業を支える人材やアイデアを生んだ伝説的チームがその当時いかにして夢破れたか、を関係者たちのインタビューと当時の姿を映した膨大なフッテージから振り返る歴史ドキュメンタリー。

アンディ・ハーツフェルドやビル・アトキンソン等、そこに集ったエンジニアたちは"ロックスター"のように当時は絶大な憧れの対象だったと説明されるが、General Magicの失敗後には若者たちが彼らの理想を引き継ぎ、後にiPhoneやAndroidを生んでいく。その点では大河ドラマ的でさえある。


失敗の根本原因として「1880年代にテレビを作っていた」、「パドリングが早過ぎると波に乗る前に腕が疲れてしまう」という例えがされていたが、未来についての具体的なビジョンを天啓のように受けていたからこそ周囲が見えなくなるということもあるのだろう。AT&Tとの提携によるクローズなシステムがインターネットのオープンなネットワークを前に陳腐化される事態は、当時の職員の心情を想像をするだに苦しいものがある。

しかし、そのインターネットでさえ自由の楽園ではないことが決定的になっている現在から振り返れば、後に西海岸的な理想主義が敗退していくその端緒を見ることもできるわけだが、同時に今だからこそ、仕事や給料ではなく世界を変えたい、何か素晴らしいことをしたいという情熱や理想は、いつか結実するものだとも信じられるようにも思えた。

また、General Magicのアイデアを丸々盗用して1993年のCESでNewtonを発表した親会社の悪役ジョン・スカリーも印象に残った。彼が自己弁護で全て真実を語っているとは思えないが、彼もまた世界中の人たちを前に敗退した一人であり、心に大きな傷を負ったということは真実のようにも感じる。
meguros

meguros