瀕死のベトナム映画界に新旋風。
今まで見たことがないような躍動感、壮大なカメラアングル。見終わった後にタイトルに込められた意味を噛み締める作品。ロムは走り抜きます。生き抜くために。
作中に出てくる幸福とはほど遠い最貧層の街の風景、瀕死の人々、ロムの街では人生は駆け引き。一攫千金で人生逆転を狙う欲望がぶつかり合う世界。騙し騙され、盗み盗まれる過酷な世界。これは実際に監督自身の目で現実を見ていないと描けない世界観だと思いました。きっとロムと同じように最悪の状況から抜け出すために努力をしてきた人を見てきたのだろうと感じます。
プロットは違法闇くじのシステムのわかりづらさなどいくつか混乱する点がありますが、まるでドキュメンタリーのようなリアルさ、サイゴンの独特の路地で闇くじのプレイヤーにサービスを提供する子供たちのショッキングなランニングライフ。サイゴンの美しい光の下では一日一日を生きるのがやっとの生活を送る非常に厳しい生活の風景があります。そこで子供たちは走り抜けるのです、闇くじの数字を予想して人々に届けるために。ロムもその一人です。下や上を見てみると想像もしない生活があります。やっぱりそういったものに目を向けるきっかけを与えてくれるので映画ってみるべきですね。とりわけベトナムのようにアジアの中でも希少な立ち位置にある国の作品は見る機会も少ないですし、思っても見ない気づきがあるので貴重です。
