戦争の傷跡は終戦後も日常生活に波及する。犠牲となった命を悼みながら生き残った人びとは、つらい過去と向き合いながらも耐えきれない時にはひととき見過ごす。ささくれる感情をどうにか抑制しながらも時折相手の心を傷つけてしまう。生と死の境界がジェンダーと共に曖昧になっていく様は時代が変化していく兆しとなる。清廉ではない市井の人がどのように心を打ち明けていくのか、そこに国家のイデオロギーは無関係である。
冒頭の単調な色から鮮やかな彩りへと移る映像は、主人公・イーヤの心情に投影している。儚くても絶やさぬ希望を抱く彼女の献身に魅入ってしまう。ささやかな幸せが微笑ましい。