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だってしょうがないじゃないの大大のレビュー・感想・評価

4.3
発達障害を抱える遠めの親戚にあたるまことさんに、発達障害を抱える本作品の映画監督が、3年間寄り添い、対話を重ねるふたりの関係性のドキュメンタリー。


▼単なるおじさん観察劇場じゃない

▽テーマは、「危機に瀕したまことさんが障害を抱えつつ、どう生き抜いていくべきか?」ではない。

▽「叔父と監督との関係性のなかで、どう関わり合えば互いに幸せに生きれるか?」がテーマで、すごい明快で見やすかった。

▽最愛の母との別れ、家の隣人とのトラブル、家族の決定に逆らえない立場の弱さ、性欲との向き合い方、住居の立ち退きを迫られるなど、いろんな変化や逆境のなかで思うことを汲み取り、監督がどう寄り添うのがベストかを探る

▽監督自身の発達障害が原因で妻と衝突してしまった葛藤を相談され、それに何とか寄り添おうとする叔父の姿が垣間見えることもある

▽★相互的だから、受け身で叔父に事件が起きるのを待つのではなく、叔父がやりたいと言ってたことを実現させたり、叔父にとある施設での生活を提案してみたりと、ストーリーに起伏を作っている


▼他人との対立を避ける登場人物たち

▽物語に緩急をつける上で、登場人物が対立する場面を入れることはよくある

▽やや強引に叔父に関する手続きを進めたり、性欲まで否定する後見人のおばさんと、監督や叔父が対立をしようとしないところに、物腰の柔らかい性格がにじみでてる

▽夏でも風呂もパンツ替えも週一回という叔父に対して、頭ごなしに「毎日やれ」というのではなく、「毎日着替えるべきと洗脳されてるのか?」という、当たり前を疑う寄り添い方は素晴らしすぎる。

▽対立したりただ流されるのではなく、どうしたいのか、どうしたら幸せなのか、自分と向き合い対峙する方向に向かう

▽知らず知らずのうちに観客も「どうしたら幸せになれるか」自分と向き合うことになる

▽そこにガチッとスイッチが入る大雨が降る七夕で笑い合うシーン素敵


▼一生懸命に生きてる

▽切られてもなお発芽したり、きのこが生える桜の木

▽週に一度のまことさんの入浴

▽何度も同じ動作を繰り返す


▼ちょっと調子はずれだけどほのぼのな音楽が、登場人物や人間関係をそのまま生き写してて素晴らしい
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