kito

カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇のkitoのレビュー・感想・評価

3.7
とても面白く、吹替版、字幕版両方で2回観てしまった。

原作は20世紀初頭の怪奇・幻想小説の先駆者のひとりとしてカルト的人気を得ているラヴクラフト。監督が彼の熱烈な信者だそうで、映像化は至難と言われる”独特の世界観”を上手く映画化していると思う。一方でラヴクラフトを知らないと”とんでもB級映画”とみなされるだろうし(まあ良い意味で否定できないけれど)、レビュースコアがイマイチ高くないのもいた仕方ないのだろう。

大筋は単純で、隕石と共に飛来した謎の宇宙生命体が主人公一家にもたらす恐怖が描かれる。前半、宇宙生命体はTVや携帯電話、パソコン・ディスプレイといった電子機器で音や光を操り家族たちの精神に徐々に異常を引き起こしていく。そのひたひたと忍び来る狂気が実に恐ろしい。とりわけ、母親の料理シーンには思わず目を背けてしまった。

後半では飼い犬や家畜(アルパカ!)に直接的な危害が加えられていき、家族にまでとんでもないことが襲いかかる。前半の心理的な恐怖に比べるとアクション主体で怖くはない。ラストは幻想的で”ぶっ飛びな展開”だけど、未知の地球外生命体との”遭遇”などというのはきっと人知の及ばないものなんだろうなあ、などと良くできたSFを楽しんだ後の気持ちになった。前半は「ポルターガイスト」や「シャイニング」、後半は「遊星からの物体X」や「スペースバンパイア」を思い出し、一粒で二度美味しかった。

ラヴクラフトのことは昔から知ってはいたが、実際に読んだのは数年前ちょっとしたプチマイブームが起こり短中編を数作品読んだ程度。本気マニアのレビューを読むと、いろいろ比喩、暗喩、オマージュが散りばめられているそうで監督の”ラヴクラフト愛”が滲み出ている、と。

GYAO! 残り2ヶ月の間に配信権のある良作をどんどん出し尽くして欲しい。
kito

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