ノラネコの呑んで観るシネマ

ようこそ映画音響の世界へのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

ようこそ映画音響の世界へ(2019年製作の映画)
4.5
目に見えないので、スポットが当たることの少ない音響の世界をフィーチャーしたドキュメンタリー。
映画の両輪は映像と音。
特に音響は、真にプロフェショナルでディープな世界だ。
映画作家で撮影まで自分でやる人はいても、音響まで出来る人はほぼいない。
映画は、特に技術的ブレイクスルーが多く起こり、証言者の多くが存命の70年代以降の音響の歴史にフォーカスする。
数十年間使われ続けたモノラルからステレオ、さらにマルチチャンネルへの劇的な変化が10年に満たない期間に起こっていることに驚く。
この変化を作り出したのが、コッポラ、ルーカス、スピルバーグ、リンチと言った新世代の独立系の作家たちと、同世代の音響アーティストたちなのが面白い。
やはり表現のブレイクスルーは、既存の常識からは出てこないんだな。
彼らとは対照的なのが、大手スタジオの姿勢。
音響を軽視してリストラ。
意識の高い映画作家たちが先行投資して、やっとスタジオが付いてくるんだから大変だ。
心の健康を保つには、「常に片足を仕事以外に置いておく」のはどんな世界でも共通する大切なことだよな。
これは映画の見方を多角的にしてくれる優れた作品で、これを観て音響を志す人も出てきそう。
昔通ってた映画学校にフォーリー(効果音)のスタジオがあって、色んな音を作って遊んだけど、あれは面白かったな。
「ミックスを重ねて、ある瞬間に鳥肌が立ったら、映画は完成!」