スターリン率いるソ連が権力を支配する1948年のハンガリーを舞台に、
ホロコーストで家族を失った16才の少クララと、42才の医師・アルドの孤独の共鳴を描いた、バルナバーシュ・トート監督作品。
家族を失った孤独の重さ、傷の深さを、二人の心の寄り添いの切実さを通じて、
丁寧に緻密に綴っていく。
暗い題材だが、
叔母を交えて3人でアルドの誕生日を祝い、拙いダンスを踊るシーンなど、
コミカルなやりとりで緊張がほぐされるような場面もあり、
2人の心の寄り添う温度がリアルに伝わってくる。
クララを守るためのアルドの決断、
3年後の再会。
アルドがこみ上げる愛を無言で握りつぶすラストが、ただただ切ない。
ホロコーストの後に生き残った人を描いた希少性も含め、新たな名作の誕生に拍手。
現在のウクライナ情勢から、登場人物達のような孤独を抱える人が生まれないよう願う。