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シュガーランドの亡霊たちのjonajonaのレビュー・感想・評価

シュガーランドの亡霊たち(2019年製作の映画)
3.6

30分と短い尺のドキュメンタリー。
大学の頃友人の勧めでキリスト教からムスリム教徒へ転身。
大学を卒業後、ISISに『入国』してしまったかつての友人。

なぜ彼が?
彼はどのような人物だったのか?
大学の友人達がその人物・仮称『マーク』について思い巡らせるインタビュー。

○いいところ
・短くて見やすい。

・友人達が身バレ防止の為にマーベルヒーローなどの仮面を被ってるのだけど、地味にその楽しそうなムードと話してる内容の哀しさがいいギャップになってる。

・ラストシークエンスに、人1人が居なくなる、ということの辛さがよく現れてる。
かつて一緒に撮った写真、彼だけが居ない今の俺たち…と言った感じでしょうか。

・友人が口を揃えて言う『実はFBIのスパイ説』。彼が両親が軍人で…ということもあり一定の信憑性があることを踏まえても、なかなか信じがたい発想。
それでも、自ら過激思想を信じて入国したと考えるよりは、大学時代から正体を隠して裏切られていた方が『マシ』。
というところに、人情がよく現れてる。
信じがたいものでしょう。

・彼が心配だ。今俺が思うのは、やつが望んでイスラム国に行ったのかスパイなのかじゃなくて、生きてるのか死んでるのか。
いい友人たちです。

・『地方は人種のるつぼだったが、黒人は少なくクラスでは彼1人が黒人だった』
環境による所から疎外感を覚えてたのでは、少なくとも友人と離れた大学卒業後は孤独だったのでは。

・『大学の間はそんな気配なかった。卒業してから変わった』という所に、
なにか、日本でも世界どこでも
共通する哀しさを感じる。
大学を卒業してから、久々会うと、やたら健康食品にハマってたり…世界陰謀論を唱えたり…1人で生きていくってこれほど大変なのかと感じる部分はある。

・ジハードを肯定するメッセージを発信したり、堂々と旅行日記を書くようにツイッターなどでイスラム国へ向かう過程(星いくつ、という風に衣食住などを評価してたそうです。愚痴ってたとのこと。)を記していたり、それをネットを介して見てた友人たちの証言がリアル。

同じムスリム系の友人たちは彼と関わってたことが世間にバレることを恐れ、家族は当人を心配してムスリム協会Tシャツを全て燃やしてしまう。

同じ国・信仰の人でもそれぞれに考え方があるはずなのに、過激思想がどこかで立ち現れると、もう一方でも暴力などで応じる者が現れる。そんな背景があるのかなと思う。

・ラストがかなしい。

○よくないところ
・短編なので致し方なしですが、想像していた以上のものはありませんでした。

・基本友人たちの喋り通しなのだが、インタビュアーがもっと突っ込んだ質問をしたり『なぜ彼が入信したのか?』を推測させる場面がほしかった。
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