回想シーンでご飯3杯いける

461個のおべんとうの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

461個のおべんとう(2020年製作の映画)
2.8
思いやりの形、家族の形、愛の形。インドに続いてお弁当映画が多く作られるようになった日本。おそらく、そのきっかけになったのが、本作の原作となるエッセイ「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」(2014年)と思われる。著者はミュージシャンの渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET)。その経緯もあって、俊美さんは同じお弁当映画である「パパのお弁当は世界一」で俳優デビューも果たしており、映画版「461個のおべんとう」はそれを越えてくるのか?と注目していたのだが、、、。

他のお弁当映画と決定的に違うのは、この「461個のおべんとう」は初日から特に苦労もなく弁当を作り上げてしまう事。初日は弁当作りに慣れない親が悪戦苦闘して、学校で蓋を開けるのが恥ずかしいような弁当になってしまうというのが定番の展開なのだが、本作にはそれが無い。

早い話が、俊美さんをモデルにした本作の主人公は、最初から料理が得意なのだ。ミュージシャンには料理好きが多い。時間を犠牲にしてでもひたすら料理に拘る。そのプロセスが音楽作りに似ているのだ。原作を読んでいないので比較できないが、基本的に弁当作りの苦労話は出てこないし、それ故に上達も描かれない。要するに弁当があまり映らない。これはお弁当映画としてちょっと厳しい。

また、息子役の俳優がポーカーフェイスなのでストーリーも盛り上がらない。中盤で弁当をあまり食べなくなる展開があるのだが、その理由も演技としてあまり表現できていないし、ダイエット云々の話を持ち込むには、あまりに体型が華奢。もう少し愛嬌があって元気な子をキャスティングすべきだったと思う。

少し辛口のレビューになってしまったのは、先に公開された「パパのお弁当は世界一」や「今日も嫌がらせ弁当」の出来が非常に良かったから。観る順番が違っていたら、評価も変わっていたかも。

あと、KREVAとやついいちろうはTOKYO No.1 SOUL SETのイメージと全然違う。井ノ原快彦が演じる主人公は俊美さんというより、完全にアジカンのGotchだ(劇中では違うバンド名になっているけど)。