このレビューはネタバレを含みます
ザヴィエ・ジャン監督作。
大規模な爆撃によって壊滅状態に陥ったNYで、咄嗟に地下シェルターに避難した9人の男女の運命を描いたサバイバルスリラーですが、序盤に提示された“誰が何のために爆撃したのか”や“人体実験のような行為の目的は何なのか”といった観客の興味を惹く大きな謎が解明されないまま幕切れを迎える消化不良な作品となっています。
序盤にディストピアSFの匂いを感じさせつつも、蓋を開けてみれば本作は地下シェルターという密室空間に逃げ込んで出られなくなった人々の心理的駆け引きや本性の露呈を主眼に置いた心理スリラーとなっています。本作のような密室シチュエーションの心理劇は類似の作品がいくつも作られていますし、水・食糧不足や不安、焦燥感が次第に人間の残酷な本性を暴露させてゆくという展開ももはや使い古された王道パターンであり目新しさは感じられません。
SF的匂いを充満させた意味深なシーンを序盤に盛り込んだことで、それらが解明されないことによりかえって消化不良に陥る残念な作品で、観客はやけに広々としている地下シェルターで発狂してゆく人々のバイオレントな争いを始終眺めることになります。
本作と特に類似性の高い作品として2016年に制作された『10 クローバーフィールド・レーン』(『クローバーフィールド/HAKAISHA』(08)の続編)が挙げられますが、本作より遥かに優れた出来となっていますのでお勧めします。