旅するランナー

すばらしき世界の旅するランナーのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
【すばらしき演技】

ヤクザな男のカタギへの道。
刑務所でも暴れまわるヤンチャな男。
積みあがる身分帳。
ムショ暮らしの長い男の、一般社会への適応はイバラの道。

だけど、この男、弱い者いじめが許せない、正義感の強い奴なんだよなぁ。
頭に血がのぼりやすい短気さと、思わず手が出てしまう喧嘩っ早さがアダ。

社会復帰を支える人たちの優しさ、
自動車教習所でのヘナチョコぶり、
梶芽衣子による「見上げてごらん」
などホッとするシーンを織り交ぜつつ、一人の男の苦悩を描き切った、西川美和の脚本と演出が冴え渡ります。

そして、ヤクザ者の哀愁を見事に演じる役所広司。
すばらしき演技。
この役者根性が見上げたものです。

さあ、見上げてごらん、広がる空を。
不寛容な社会、閉塞的な世界の上にも、空は広がっているんだな。