イーグル

すばらしき世界のイーグルのネタバレレビュー・内容・結末

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【弱者の負のサイクルについて、世の中の人にもっと知って欲しい】

幼少期の虐待もあり少年時代から犯罪を繰り返し、人生をほぼ檻の中で過ごした三上が13年の刑期を終えて初老に近い年齢で出所する所からはじまる。
三上は世間の常識が何もわからないながら「今度こそ真っ当に生きよう」と身元引き受け人の弁護士・庄司夫妻や、身の回りの人に支えられながらも不器用に自立への道を歩んでいく。

三上という人間が、見ていてとてもつらかった。
大人の成熟した気持ちに対する辛さではなく、
子供の失敗を見守っているような辛さだった。
『はじめてのおつかい』で幼い子が明らかに失敗してるのに、ウキウキ成功してる気持ちで歩いて帰宅して失敗したことに気付いて泣き出してしまう時を見守っている気持ちに近い。
大人なのに中身が3歳くらいの子供なのだ。

三上のやる事なす事全てがうまくいかなくて見ていてかなしくなる。
それは三上が普通の人ではない事を示している。
なんだけど、驚く位三上は自ら起こす行動が良い方向に行く!と信じて自立へととても健気に邁進する。
だからこそ、できなかった時に三上はとても悲しむし、できない自分に怒りを覚えて、いとも簡単に犯罪をおかしそうになる。

悲しい。これこそが弱者のサイクルだ。
強者は絶対に気づかない。
そして、自分の中の弱者サイクルにも気付かされてしまった時でもあった。

母を求めて児童園へ尋ねた時、三上の心のうちを見た気がした。
子供の頃におしえてもらった歌を、当時のお手伝いに来ていた人と、歌う三上。子供らに混ざりサッカーをする三上。
サッカーをしている時に、夕陽がとても綺麗で、そして子供らに混ざる三上がなぜか子供たちと同じ年齢に見えた。
まるで、この孤児院にいた時の当時の三上を現しているようだった。
そして、その時の三上が「いつかお母さんが迎えに来る」と信じきれている1番幸せな時期だったのではないだろうか。

結論、三上という男が望み、選んだ世界は「悪行を見逃す汚いこの世界」ではなく「すばらしきちがう世界」だったのではないだろうか。
というのを、最後のシーンで三上が同僚からもらったコスモスを握りしめて亡くなるシーンで描いている気がした。

この世界は、三上のような純粋な人が生きるにはあまりに汚い。
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