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すばらしき世界のHIROのレビュー・感想・評価

すばらしき世界(2021年製作の映画)
4.2
「3度目の殺人」を先日観直したばかりなので、なんとなく役のイメージが重なるかなと思ったが、そんなことは全く感じさせないのが、役所広司の素晴らしいところなんだと改めて気づかされた。

そして、泣いた。
ジンワリと涙が浮かんでいたが、ラストは嗚咽に変わった。
懸命に生きていきたいだけだった。できるだけ自分の信じたこと、真面目に考えたことを貫きたいだけだった。でもそこに社会の常識、他人の思惑なるものが絡んでくると、貫き通すことは難しい。
人情味は厚いが短気で、少々攻撃的な主人公は本当に社会の悪として阻害される存在なのだろうか。

彼を取り巻く人々も、全員が少しだけ彼を受け入れてくれなかったり雑に扱ったりしていた。それを受けた側の感覚を気にせずに。自分にそんな行動がなかったとは言えない。だこらこそ人を許したり受け入れたりすることが大切なのではないだろうか。

人生全てにおいて間違いのない人はいないだろうし、誰にも何も迷惑をかけずに一生を終える人もいないだろう。許しとは、受容とは、優しさとは、繋がりとは、正義とは、悪とは……。
色々と考えさせられた。

風呂場で仲野太賀が主人公の背中を流しながら、彼を説得するシーンに涙が溢れた。こんなにも他人に関わっていける人がいるなら、その人を思って相手を思い遣って言葉をかけることができる人が多くいるのなら、タイトル通りこの世界はまだまだ捨てたものではないだろう。

私の周りにはどれほどそんな人がいるのだろうか。そして自分自身はそういう人になれているだろうか。

主役も脇役も、誰もが素晴らしいと思える作品であった。
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