くりふ

『ワナジャ』のくりふのレビュー・感想・評価

『ワナジャ』(2006年製作の映画)
3.5
【少女はいつまで踊らされるか】

Amazon Prime Videoで見つけ、少女が舞う古典舞踊がよさげなので見てみた。

2006年のテルグ語映画で、米コロンビア大学の卒業制作?として完成されたらしい。2007年のベルリン国際映画祭で多数、受賞したようだが、(当時)13年前の欧米圏映画祭で、今では凡庸とも思えるこのインド映画が、良くも悪くも驚かれたことは、わかる気はします。

アーンドラプラデーシュの片田舎で、漁師(つまり低カースト)の娘として暮らす15歳のワナジャが、この地で生まれた古典舞踊クチプディと出会い、かつてその踊り手だった、女領主の屋敷で奉公することになるが、トンデモな運命が待ち受けていた…。

奉公先で、そこのバカ息子と出会うまでは文句なく、かっちり惹き込まれました。撮影が的確ですね。王道守る安定感があり、守ればこれほど強くなるかと感心。頻発する印ならではの情景にも見惚れます。

出演者がすべて素人ってところも面白い。インド人から見たらわかりませんが、自分が見る分にはまるで不自然さがない。ヒロイン少女も、巧いとは当然思えませんが、役には過不足なく嵌っています。

が、後半の語りがどうにも…。

巻き起こる残酷な事件が、印特有の格差社会では当たり前にありそうだな…とは推測できますが、展開が通俗的かつ、何だか展開もショートカットされているようで、ヒロインの心情…特に、ハートブレイク具合が見えなくなる。

物語的には、段々と残念な仕上がりでした。公開当時はこれでよかったのかも、ですが、今では印映画でも、女性の作り手が黙っていないので、これだと、女性への憐れみを誘うような作りとも感じてしまう。

一方、少女の舞うクチプディは…私の感じられる範囲で、ですが…本当に素晴らしい!

元々、踊りには素人だったそうですが、1年かけて習ったそうだ。その経緯をそのまま、映画に取り込んでいるのでしょう。痩せた肢体と長い手足が、最後の舞いでは滑らかな表現兵器となっていますね。

構成としては、少女の苦難が最後の舞いに結実する、と狙ったのでしょうが、私は物語を巧いと思えず、舞いとは乖離をおぼえました。

が、独立した舞いとしてはお見事!それだけで見る価値ありとは思います。

<2020.8.4記>
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