いとまど

花束みたいな恋をしたのいとまどのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

さすがは坂本裕二脚本。ドラマ『カルテット』の神回6話を2時間にして見せてくれる感じあって、恋愛関係におけるすれ違いがこれでもか!!と描かれていた。
心のやわらかい場所を握力測定か?ってぐらい、ずっと締めつけてきます。

まず、麦くん絹ちゃんの出会い方が最高な。これはハッピーエンドの出会い方。
好きなものが一緒ってだけで、その人のことより一層好きになるし、好きなものは2人の思い出になるし、すっごい嬉しい気持ちになるのよね…

私も気に入った映画の半券、捨てないで定期入れに挟んでたりするような可愛いところあるから、菅田将暉に僕もなんですよ!って言われて付き合いたいよ???
サブカルこじらせ女だから、劇中のアーティストや作品の取り上げ方に、分かりみが強すぎて内心悶えてた。押井守が恋のキューピッドになっててワロタ。絹ちゃん「クロノスタシス」をカラオケで選ぶセンス最高&可愛い&優勝
あと全編通してオーサムシティクラブ推しだったのでファンとしては嬉しい限り。

タイトル通り花束みたいなキラキラした恋が始まって、でも始まりがあれば終わりがある、不可逆な物語が進んでいくんですよ。絹ちゃんが海辺でそんな考えがよぎってしまう瞬間、これも後から思い出したりするんだろうな。

生活や価値観、些細なことのズレが重なって距離がどんどん広がっていく感じ。
別に浮気したとか死に別れとか大事件が起こるわけじゃなく、お互いに思いやりや理想があってそれなりに頑張っているんだけどさ、
こういう細かい部分を双方の視点で見せ、すごく説得力がありました。同じ出来事に対して、一緒に楽しめないor悲しめないなとか、どうでもよくなっちゃったっていう瞬間とか。

そして、好きな人がいつの間にか、好きだった人になってしまったと気付いたら?
特に好きなものが同じだっただけに、そこを蔑にされるのはキッツイ…
カルテット6話で鍋敷にされる詩集のように、読まない本が積み上がっていき、それが2人の間を壁のように隔てていく。

イラストを描いてる麦くんが好きで、麦くんも「絵好きですって言われた」を大事なことなので3回も言っちゃうくらい(アレは麦くんにとっては告白されたも同然)だったのに
どんどんつまらない麦くんになっていくのが悲しかった。大人になるってこういうことだろ!って言われたらそれまでなんだけど…
カルテット6話を見返してたらクドカンが「好きなものを見て、隣を見たら彼女も同じように感じてる。そんな事は些細なこと。」って言ってて、そんな些細な事が嬉しかったんだよなって思ったり。

別れ話をし始める時、いつしかの自分たちのような男女を見て(羊文学のチョイス!これもまた良い!)、あの頃のようには戻れないと苦しいほど実感してしまった…あんなにも共感して寄り添っていたはずなのに、初々しく煌めいてた時間には戻れねぇんだよなぁ…
現実は別れ際ちょっと揉めたり、スパッと終われずダラダラ関係もったり引きずりに引きずったりするので、綺麗に別れられて良かった。花束がドライフラワーになった感じ。

私のかつての花束みたいな恋は、花首から落ちるような終わり方ばっかだったけど、部分的に見たら楽しいこともあったし、一緒に聴いた音楽や映画にその人との思い出がリンクされてて思い返すこともある。もしバッタリ会うことがあったら、2人みたいに手を振り合えるのかしら…なんて想いを馳せる映画でした。
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