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花束みたいな恋をしたのasakoのネタバレレビュー・内容・結末

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

ありそうでなかった、どこにでもいる普通のカップルの物語。
特に大きな事件が起こるわけでもないけれど、だからこそ、二人が少しずつすれ違っていくのがあまりにも切なかった。

二人でやろうと買ったゲームを絹ちゃんだけが進めていたり、二人で読んだ漫画も途中で止まったままだったり。
学生の頃は軽蔑していた「カラオケ店に見えないカラオケ」に絹ちゃんが行っていたり。
昔好きだったのとは違う本を、麦くんが読んでいたり。
学生の頃、就活で傷付いた絹ちゃんへ麦くんが言って励ましたのと同じ言葉を、社会人になった麦くんへ今度は絹ちゃんがぶつけたり。
転職を考えているという絹ちゃんへ、辛辣な言葉をぶつけてしまう麦くん、そして投げやりなプロポーズ。

環境の変化、時の流れによる二人の変化。
その小さな変化の一つひとつが歪みを生み、どんなに気の合う二人でもすれ違ってしまう。誰も悪くないのに。

いまお付き合いしている彼と麦くんをどこか重ねてしまって、後半はずっと苦しかったです。
こんなふうにすれ違っていくのかな、離れていくのかな、なんて想像してしまった。
久しぶりに映画館で号泣してしまったし、終わってからも思い出しては涙が止まらなかった。
いまの「花束みたいな恋」を大切にしようと思いました。

切なくて、苦しくて、でもどこかあたたかくて、幸せで。
坂元さんの脚本は行間を読ませるのが本当に上手だなあと思いました。
(バロンを引き取るジャンケン、麦くんがパーで勝ったのも絶対敢えてだよね。それがどういう狙いなのか、上手く言えないけど)
小説を読んでいるような気持ちになる映画でした。
好きな邦画No. 1になりそうです。
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