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花束みたいな恋をしたのmidnightBlueのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
5.0
"え、それ私も好き!私の好きなものばっかりだし、私もそれしたことあるよ"
なんて、自分の内側を映し出されてるような錯覚に陥るセリフとストーリーの数々にドキドキさせられっぱなしだった。
『カルテット』で坂元さんの脚本が大好きになり期待だけを胸に見に行ったけどもう、期待を優に超えて簡単に恋に堕ちた。脚本に。こんな言葉を紡げるなんて凄い…(好きは語彙力を喪失させる)
過去の恋愛があったからこそ今の自分が形成されてると思ってきたけど、それを"花束みたい"だなんて表現しちゃうのズルいよ。

モラトリアムな大学生活から社会人へと移る過程の恋愛模様は想像に難くない展開なのに、それを坂元さんの脚本や主演二人の言葉を介さない表情での演技を持ってするとこうも心掴まれる作品になるのね…感無量です。
好きなのか分からないけど一緒にいたいなんて言う、味がしなくなったから吐き捨てたのに、思い出にベッタリ張り付いちゃってなかなか剥がせないガムみたいな気持ちとか、よく分かる。
変わらないでいたいし、いて欲しい。なのに街も人も環境も思わぬ方向に変わっていくこともよく知ってる。
だからずっと、涙が溢れて止まらなかった。

作品を観て湧き上がってきた感情とか感覚を鮮度の良いまま保ちたくて、忘れたくなくて、すぐに上書きしたくなくて、観終わった後すぐトイレに駆け込んで暫く余韻を噛み締めたりして、そんな気持ちになるのは久しぶりで、これまた久しぶりに、生涯のベスト映画に出会ったと思った。
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