まーろう

花束みたいな恋をしたのまーろうのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
5.0
表向きはリア充カップル向けのデートムービーですが、やはり坂元裕二脚本、その実態は学生時代に培われた文化的なものを愛する感受性が、就職後の長時間労働によって失われ、心が乾燥していく過程を2010年代のサブカル分野の固有名詞とともに描写する凄まじい映画でした。

定時退社できると聞いて就職した会社で長時間労働に追われて疲弊し、宝石の国やゴールデンカムイの続きが読めなくなり、「もうパズドラしかできない」と呟く菅田将暉の姿に共感しかありませんでした。サラリーマンが作業要素がメインのソシャゲにハマる理由がよく分かります。

僕もFGOのシナリオを全然進められずに周回だけこなしたり、残業しない仕事術みたい本を読むようになったりしましたが、花束みたいな恋をしたのパズドラと自己啓発本の描写を見て、こういうことを描ける坂元裕二凄えなって思いました。

前の列に制服カップルの高校生男女がいたんですけど、二人が劇場を出た後、どういう感想を語り合ったのか気になります。彼らにとってはこれからのシミュレーションになったと思うんですよね。僕には有村架純と付き合うこと以外は趣味の時間を奪われた社会人あるあるでしたけど。

主人公の「帰りが20時半になることもあった」という言葉に「21時前に帰れるなら早いじゃん」と思ってしまったので、改めて自分の働き方を見直そうと思いました。
長時間労働に疲弊し、趣味を楽しめなくなっている人たちにこそ見てほしい映画です。
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