Osamu

木靴の樹のOsamuのレビュー・感想・評価

木靴の樹(1978年製作の映画)
4.2
エルマンノ・オルミ監督1978年の作品。今年、各所でリバイバル上映されていますね。

人間の与える姿と奪う姿を観る映画。

19世紀末期、イタリア・ベルガモ地方の小作人4家族の物語。

貧しいながらも喜びを持ち、働き、祈り、生きる。コミュニティの中で一人ひとりが役割を持ち、それを遂行する。

持てる者は持たざる者たちから奪い、持たざる者たちは与え合う。

小作人制度って、ある意味世界のスタンダードな仕組みなのでしょうね。放っておくと、そこに収斂されて行く。

相互扶助に見える社会制度も、よく見ると金持ちに都合が良い、金で弱者に苦労を押し付ける仕組みだったりします。

僕が感じた主な見どころは3つです。

1つめは、丹念に映される農民の生活です。この時代、この地方の農民たちの姿をたっぷり観察できます。冗長と感じてもおかしくないくらいですが、愛おしくていつ迄も観ていたかったです。

2つめは、演じているのが全員素人の農民だということ。オルミ監督、挑戦的ですね。この挑戦、成功しているのではないでしょうか。農民たちが光っています。

3つめは、ラストシーンです。農民たちの姿と、灯りが移動する遠景が哀しく美しいです。

避けて通ることもできた面倒なことを積み重ねて作られているのではないでしょうか。187分とちょっと長いですが、観る価値大いにあり、だと思います。
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