ずどこんちょ

ダーティハリーのずどこんちょのレビュー・感想・評価

ダーティハリー(1971年製作の映画)
3.5
イーストウッドの背中。
イーストウッドの背中はしゃんと伸びている。背がスラリと高いからしゃんと伸びて見えるのか、いや伸びているから背が高く見えるのです。検事局の大階段を登っていくシーンで、ハリーの背中が画面の中心に映されます。
なんてことないシーンですけど、その背中がカッコ良くて痺れました。芯が通っている男の背中という感じ。
そして、ハリーの銃弾に倒れた犯人が見上げた時、その高身長としゃんと伸びた背中が圧倒的な威圧感になります。
その背中は生き様でもあり、ハリーの身体的武器でもあるのです。

ハリー・キャラハン刑事は正義を貫く真っ直ぐな刑事です。
悪を許さない頑固な姿勢が悪人を追い詰めますが、同時に型に嵌らないハリーの違法捜査は人権や法律を遵守する警察組織には向いていません。
快楽殺人を繰り返す殺人狂を相手にしたハリーは、怪我をした犯人を痛めつけて人質の少女の居場所を吐かせるのですが、回収した証拠は違法捜査により回収された物として無効になってしまいます。決定的証拠もなく放免されてしまう犯人。
一方で、人質の少女は既に残忍に殺されていました。
犯人の人権が徹底的に守られ、被害者の無念が積もる歪んだ社会の仕組み。
現代でも感じる理不尽さです。

悪人がしっかり悪人で溜飲が下がりました。人間の屑です。だからこそ、ハリーの粛清に重みが出ます。
加害者の人権を手厚く保護する社会の仕組みが理不尽で歪んでいるのなら、ハリーのような歪んだ正義の執行人がいても良いではないか。被害者になりうる恐怖に怯える善良な市民たちは、無力な法に代わって正義の鉄槌を下すハリーの存在に護られているのです。
被害者の無念を晴らしてくれるアウトローな孤高の刑事。ラストシーンのハリーの背中はどこか哀愁も帯びていました。