Jun潤

カモン カモンのJun潤のレビュー・感想・評価

カモン カモン(2021年製作の映画)
3.4
2022.04.26

ホアキン・フェニックス主演作品。
純粋な洋画ドラマはあまり見ませんが、主演とモノクロということに惹かれて今回鑑賞です。

『スイス・アーミー・マン』『エクス・マキナ』『ミッドサマー』など数々の奇作怪作を生み出し続けるA24の最新作は大人と子供の交流をモノクロで描くのどかで優しい世界観。
そこに映し出されるのは不器用な大人と素直な子供の様相。
モノクロという白と黒しかない画面の中で、大人と子供という二元論の他に、会話を聴かせる作劇を仕掛ける作品。

ラジオジャーナリストとして街から街へと渡り、子供たちから様々な話を聞くジョニー。
妹に頼まれ、9歳の甥のジェシーの面倒を見ることとなる。
ジョニーの愛情や仕事に興味津々のジェシー。
そんなジェシーにジョニーも様々な話を聞かせる。

序盤で描かれる、国や仕事、人生観や死生観に至るまで、達観した解答を持つ子供たち。
それと対称に、純粋な瞳で疑問を持ち、一つ一つ答えを求めていくジェシーの様。
そこに子供が一歩一歩着実に成長していく姿が如実に描かれていました。

また、同時に描かれる不安定な大人たち。
母と夫の介護、子育てから解放されたことによりこぼれる愚痴など、不安定な姿を見せるジェシーの母・ヴィヴ。
ジョニーもまた、普段から子供たちの話を聞いているのに、いや聞いているからこそ、時々フッと消えてしまいそうな儚さを孕んでいるように見えました。

そして作品を彩る音楽。
画面がモノクロだからか、時代は現代に近いはずなのに、奏でられる音にはどこか懐かしさが。
ジョニーがジェシーに貸した機材で集められる周囲の喧騒もまた、物語を彩る上で重要な要素になっていたと思います。

これぞまさに『ジョーカー』の衝撃は始まりに過ぎなかった。
恥ずかしながらホアキン・フェニックスを初めて見たのが『ジョーカー』だったので、ホアキン=ガリガリの体で怪演するおじさんなイメージがこびりついていましたが、今作で観れるのはぷっくりお腹で子供に振り回されるファンシーなおじさん。
これには驚かされましたが、やはりその身振り手振り表情からはジェシーに対する困惑と、本当の親子と錯覚させる愛情、大人も大人で子供に気付かされることがあるという、本当の意味での大人らしい大人の姿が演技からも垣間見えました。

起きると思ったことは起きない、起きないと思うようなことが起こる。
それでも進む、先へ、先へー。
「C'mon C'mon」
Jun潤

Jun潤