草彅くんがトランスジェンダーの役を演じたと話題になった本作ですが、個人的にはそこまで全肯定はできず。とはいえ草彅くん、そして新人の服部樹咲さんの演技は眼を見張るものがあります。
草彅くん演じるショーガールの凪沙が親の虐待が理由で行く宛がなくなった親戚の少女、一果を預かることになるところから物語が始まります。お互いの第一印象は最悪で、凪沙はかなりツンツンしてますし、一果はグレる一歩手前みたいなメンタリティで早速心配になってしまうのですが、二人の間には徐々に絆が芽生え始めます。
二人が一緒にバレエを踊るシーンなど美しいシーンも沢山あり、中盤まではかなり良かったのですが、ラストの展開がちょっとリアリティからは離れすぎているような気がして乗れなかったというのが本音です。一応、映画を観終わってから凪沙のああいった症状について調べてみたのですが、あまり例がないとのこと。トランスジェンダーの描き方について、ここまで悲劇的に可哀想な存在として描く必要があったのか。たしかに問題提起という意味ではあるのかもしれませんが、トランスジェンダーに対して偏った考えを持つ人が生まれてしまうのではないかと恐ろしさも感じました。
水川あさみのクズっぷりがとても良かったですし、一果の友人役の上野鈴華もまた素晴らしく、ちょい役にも田口トモロヲや吉村界人くんと演技派が揃い、芝居に関して見ごたえ抜群でした。内田英治監督は『獣道』なんかでもそうですが、田舎の鬱屈とした感じというか嫌な感じを醸し出すのが上手いですよね。本作でも凪沙が実家に帰るシーンは中々に胸糞悪く生々しいシーンで良かったと思います。ハッピーエンドが好きという訳ではないですが本作においては凪沙と一果の幸せな未来が正直なところ観たかったですね。
