忘れそう

由宇子の天秤の忘れそうのレビュー・感想・評価

由宇子の天秤(2020年製作の映画)
5.0
これから書く感想は私の個人的な感想です。
「絶対にこうだ!」と、断言することは出来ません。ぜひ、劇場でご自身の目で心で確かめることをお勧めします。

『由宇子の天秤』オンライン試写。
鑑賞中、私は「由宇子はなぜこの仕事を選んだのだろう?」という疑問が浮かんだ。
《ドキュメンタリーディレクター》
恐らくは望んで就いた職業であるはず、それなのにどこか暗い表情の由宇子が気になった。
ストーリーが進むうちに一つのエピソードが語られる。それは由宇子が、かつて犯してしまった間違いに父が《公正》な判断を下したということ。この父に由宇子が心動かされたということ。
そんなことがきっかけで目指した職業だったのかなと思った。
ただ恐らくその職場で戦ううち、そこに巣食う《悪》の多さ・大きさに由宇子の持つ《公正》が《正義》へと変化してく。
《正義》とは厄介なものでそれを成立させるためには《悪》の存在が必要となる。
つまり自分が《正義》である場合、自分と違うものは《悪》になってしまう。
その現実と、由宇子と観ている私と共に戦うような映画だった。そして私たちはストーリーが進むごとにどんどん追い詰められていく。
でも、そこにはただ絶望があるだけではなかった。
由宇子は様々な人と食事をする。その瞬間暗闇の中に温かな灯が灯る。由宇子にも、共に食事を摂る人にも。
この時間・この灯りは虚構なのか?いや、そうじゃない。たしかに『それ』はあったと、私は思う。
この一瞬をスクリーンを通して共有した私たち。その小さな灯火を持ち帰って、この暗い世の中を明るく照らす光に変えて行けたらいいのにと思った。もうこれ以上、誰も傷つかないために。

素晴らしい作品でした。
俳優さんの息づかい、ロケーションの美しさ、細部にまで魂が込められていた。
あと、リコーダーの曲、最後のエンドロールで『作者不詳』ってあったのも良かった!(細かい)
9月17日からロードショーです。
チケット何枚か買ったので東京だけでなく地方の映画館でも観たいなぁと思ってます。
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