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エルヴィスのKuutaのレビュー・感想・評価

エルヴィス(2022年製作の映画)
3.9
・音楽よかった。時代に合ってない曲をぶっ込むバズラーマン演出、いつもは苦手なんだけど、今回は「エルヴィスの影響下にある音楽」という意味付けがちゃんあって、ミックスでエルヴィスの歴史を語っている。最後のエミネムとか、やられた…と思った。

・トリップする=見上げる、上を目指す。「インターナショナル」ホテルのガラス張りの最上階=作られたアメリカのてっぺん。鏡の中、檻に入った男が乗っているのは飛行機ではなく、観覧車。その時々で上がったり下がったりするものの、前には進めない。エルヴィスをビジネス化した社会を、歪んだ主観のパーカー大佐=バズラーマンの目線で描く。

・彼は光を追い、出口を探す。ピンボケした祖母など、彼はフレームの外から誰かに見られ続けており、パーカーの語りという「物語上の檻」も重なっている。そんな閉塞感のある進行を、エルヴィスの歌唱や音楽がちょいちょい突き破ってくる、という構成。パーカーから見た乾いたエルヴィス、光を反射するだけだったはず虚像が、自身の意思を垣間見せる事でドラマを動かす(それを見てパーカーも泣いてる)。思えばギャツビーもそういう話だった。

・光と空、というテーマは劇中でも印象的に使われるIf I Can Dreamの引用だろう。歌詞見ながら聴くとすげー沁みる…。

・最後に辿り着くハリボテでギラッギラのラスベガス。バズラーマンの作風そのもののはずなんだけど、抑えた見せ方に徹していて好印象。静かにカーテンを閉め、ヒーローは出口のない暗闇に沈む。

・エルヴィスの対と言っていい?ジャクソン5がちらっと出てきて、こっちもダメな親父と搾取される息子の話なんだよなと思った

・駆け出しのリトルリチャードをエルヴィスとB.B.キングが微笑ましく見守る飲み屋なんて本当にあったのだろうか?ほとんど神話を見ている感覚

・アメリカの負の側面を演じるトム・ハンクス。今までの自分の役柄の相対化?
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