春とヒコーキ土岡哲朗

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!の春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

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焦ることも原動力。

焦りに追われているばかりの日々。まだ世に全く出られていないまま30歳になる焦りは、とても分かる。「あの人はこの年のときにもうこれを成し遂げていた」「同級生は今こんな暮らしをしている」。多くの人が感じるありきたりな焦り・劣等感だが、それを時計が鳴って爆発してしまう「チック、チック…ブーン!」という言い回しでド直球に力強く表現されると、こちらにも正面から入ってくる。

この映画の中で主人公にとってハッピーな瞬間は、ネタ見せのような場で見せた自分のミュージカルが尊敬する人に褒められたのと、試聴会が好感触だったのと、それをやはり尊敬する人が褒めてくれた3か所しかない。ほとんどずっと曲ができない焦りと、売れない焦り、恋人や友人を失う孤独に追われている時間だった。ずっと試聴会に追われ、それが終わってようやく友達のことを思うようになる。
しかし、周りの愛に気づけないくらい自分勝手にしたおかげで、生きているうちに大きなことをできるのかも、とも思った。