まさ

子供はわかってあげないのまさのレビュー・感想・評価

子供はわかってあげない(2020年製作の映画)
3.9
青春感が倍増する可能性を秘めたサマームービーとくれば見ないわけにはいかない。それでもなかなか都合がつかず、上映終了間際の滑り込みでなんとか鑑賞。原作不知で乗り込んだこともあり、ド頭のアニメのところで、スクリーンを間違えたかと思いつつ、不安ながらも身を任せたら、れっきとした前フリ。しかも結構重要な。ポップコーンとジュースのトレーを持って立ち上がって出ていこうとした人もいたから、思ったのは俺だけじゃないみたい。この気持ちを落ち着かせようとしたら、今度は踊り出すし…。気持ちが忙しい。この辺でもう俺の気持ちは持っていかれてたかな。ひょんな趣味で意気投合し、本やDVDの貸し借りでさらに仲が深まっていくなんて青春そのもの。部活、言葉に癖のある先生、オカルト的なものに変に興味を持つ、異性の家でドキドキする、なんて青春アイコン満載。そして家族の描き方が温かい。今の家族はもちろん、初めて会う実父との出会いと関係の行方も見ててほのぼのする。終盤の主人公美波と母とのやり取りにはウルウルまでしてしまった。作品全体の空気感が心地よく、随所のギャグチックな演出がさらにその空気を引き立てている。出演陣も素晴らしい。豊川悦司のダメ親感もいいし、斉藤由貴と古舘寛治の父母もいい。とりわけ斉藤由貴の醸し出す雰囲気はさすがと思う。品川徹の使い方はあまりに贅沢で巧妙。そしてなんといっても主役の二人は脇に支えられて輝いていた。なかでも上白石萌歌はこの作品に半端ない透明感を与えている。青春もののお気に入りの作品がまたひとつ増えた。そして、おっさんは自分の高校時代の北海道への修学旅行を思い出す。冴えない男数人のグループ行動で、道東の海岸に立ち寄り、当時好きな子の名前を一人一人砂浜に大きく書いた。しばらくして海岸近くで自分の好きな子とすれ違い、書いた名前が見つからないかとドキドキしたが、多分名前は見つけられず、もちろん恋も実らなかった。こんなことまで思い出させる青春映画はやはり最高だ。
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