おざわさん

ザ・バンカーのおざわさんのレビュー・感想・評価

ザ・バンカー(2020年製作の映画)
3.8
1960年代の差別色の強いアメリカで、実際に銀行を買い取るまでに至った黒人実業家の実話を元にしたドラマ


子供の頃から「いかに経済を作って現状から脱するか?」とばかり考えていたギャレットは、数字に強いが真面目で曲がったことが嫌い

そして妻から紹介された怪しげな黒人実業家は人心を操ることに長けてなんでもアリ

そんな2人はごく普通の白人の青年を「青年実業家」の顔として育て上げ、彼らの会社を動かしていくことを思いつき実行しますが…


南部育ちながら不動産業で成功したいギャレットが、ロスアンゼルスで白人実業家と組んで成り上がりますが、そんなパートナーが突然死した事で頓挫

やはり白人社会で仕事したくとも、まだまだ黒人が社会で活躍できる時代ではなく、怪しげな黒人実業家と組んでしぶとく生き抜く姿が描かれます

それでも黒人経営者では出来ることが限られ、何の才覚もない息子の友だちを「青年実業家」としてでっち上げていきます

でもそこから見えるのは、「数字に強くゴルフが出来て、立ち居振る舞い良く身なりさえ整っていれば実業家」として認められてしまうという、白人社会の浅はかさを馬鹿にする2人の姿勢が風刺でもあり、コメディタッチでもあり

ゴルフや不動産経営の基礎を叩き込み、テーブルマナーを教えたことで次第に実業家として力を付けていった(ように勘違いした)彼と、地元の南部の黒人たちを救いたいギャレットの思いが、万全に思えたビジネスプランに歪みをもたらしていきます