おざわさん

オッペンハイマーのおざわさんのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.2
【1回目鑑賞:109シネマズIMAXにて】

「破壊してしまったんだよ」

量子物理学専攻の理論物理学者オッペンハイマーが、いかに核分裂による爆弾を完成させ、その後にスパイ容疑を掛けられていったのかを描いた3時間の作品

そもそもはナチスドイツに先んじて開発しなければ!と言われて作り上げたはずなのに、ロスアラモスでの実験に成功した頃にはドイツは既に降伏。
なのに慌てるように完成した核弾頭は持って行かれ、エノラ・ゲイへ載せられ広島へ、そして長崎へと投下

初めは2〜3万人と予想されていた犠牲者が実際には20万人以上だったと後に聞かされ、それまで彼が白日夢のように見てきた素粒子の振る舞いが、実験で感じた爆音や振動、そして焼かれた人間の姿に変わっていく映像の恐怖よ

そんなオッペンハイマーに対する感情は特に湧かなかったけど、やけに投下を急ぐあのスピード感とか事後のトルーマンとのやり取り、そしてソビエトから投下を急かされるあたりにはジワジワと嫌な感情が湧いてきました

さらには最後に公聴会などでのストローズら、水爆推進派からの嫌がらせなんてどうでもよくて、愚の骨頂でしか無い

物語りの中盤でジーンとのやり取りの中、本棚から取り出した「サンスクリット語の本を読んで」とせがまれて、「我は死なり。世界の破壊者なり」と読んだ彼の目に浮かんだのは、やがて来る別世界を既に見ていたのかもしれませんね

だからこそのラストシーンに、冒頭に戻るあの一言だったのかもなあ


【2回目鑑賞:4/11池袋グランドシネマIMAXレーザーGT】

やはりこの作品はこのフルサイズスクリーンでこそ完結するストーリーだ、と再確認

真っ平に感じるモノクロ場面でも、オッピーの顔のアップなどで背景とのコントラストを繊細に描き分けられていることに気づく

そしてそこから彼の孤独感や、原爆によって実際に多くの死者が出た事と不倫相手が死んだことを、同じ様に苦しんでいる彼の愚かしさも感じます

(因みにジーンの死のシーンに、黒手袋が描かれているのは今回のスクリーンでやっと気が付いた!)

そして実験では起こらなかった(様に思えた)爆発的な連鎖反応は、実はまだゆっくりじわじわと進み続けているのとおなじだということ

そして一度人類が手にしたプロメテウスの火は、決して消える事はないのだと言っているような気がしました