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ブラックアダムのTKEのネタバレレビュー・内容・結末

ブラックアダム(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

DC系のヒーロー物って単純に「皆の危機だ!ヒーロー助けて!」という作品より「ヒーローは活躍するけども、その裏にはキナ臭い陰謀や犠牲が伴っている」っていう綺麗事だけではすまない作品が多い気がする。

今作もそんな感じの作品。
前情報はほとんど無くても楽しめました。


存在そのものがもはやヒーローだろ!というドウェイン・ジョンソンが満を持してダークヒーローとして登場!

存在感ありすぎて、ブラックアダムというよりドウェイン・ジョンソンなんですよね…この辺はキムタクやジェイソン・ステイサムと同じ属性を感じます。


5000年前に栄えたカーンダックという都市で、かつて奴隷として扱われていた男が国を救うために勇者となり、暴君を倒して平和を掴み取った…と語り継がれているが、蓋を開けたら復讐心に取り憑かれた男が怒りにまかせて国を滅ぼしてたため封印された…というお話。

最初は少年が神の力によって勇者になったのかと思っていたらそうではなく、実は彼の息子こそが本当の勇者で、息子の力によって瀕死の状態から復活した親父が今作の主人公=ブラックアダムだったということ。

ブラックアダムもヒーロー名というか本名を今風に改変したもので、最後まで出てこない。
今作はブラックアダム誕生秘話って事なので、まあそうなるよね…という感じ。


今作のメインヴィランはもちろん勇者に負けた暴君の関係者(+悪魔)のわけだが、その前哨戦というには長すぎる、ブラックアダムvsDCヒーローが展開される。

このヒーロー軍団(JSA)が曲者かついいキャラが揃っていて、一発屋としては非常にもったいない。

能力に関してはマーベルヒーローとただかぶりなんですが、デザインセンスが抜群すぎる。
今風にしあげながらも、昔ながらの絶妙なダサさを取り入れており、古典ヒーローと現代ヒーローの融合を完全に果たしている。

特にホークマンの全身金ピカ+武器が棘付きフレイルでひたすら物理攻撃で戦うなんて、マーベルだったらソーに一撃でやられるモブ感半端ないのに大活躍。

そして大魔術師のドクターフェイトも、どこかのストレンジと被りまくりだけど、何でもできるというわけではなく、自分の出来る範囲で全力を尽くすといういぶし銀。

この2人の話だけで1本映画作れるだろ、と思うくらい濃厚なサブキャラでした。
スーサイド・スクワッドもそうだったけど、DCコミックはヒーロー層が厚すぎる。


そして、スーサイド・スクワッドを見ていた方なら分かるかもしれないけど、このヒーロー達は「正義と秩序のために戦っている」とは言っているものの、その「正義の線引」は完全に自分達の主観。

現代のカーンダックにて軍隊に占拠され一般人が苦しむ中、封印が解かれ復活したアダムは成り行きとはいえ軍隊を皆殺しにしていく。
そんな彼に対してJSAは攻撃を仕掛けることで住民達に「軍隊に占拠されていた時は来ないくせに、ヒーローが現れた途端にやってきた」と大ブーイングをくらう。

まあ、JSAの面々はアダムが勇者ではなく国を滅ぼしたせいで封印されていたことを知っているので、放っておいたらヤバイことになるだろうというのは分かってる故の行動なんだけど、抑圧されていた人達からすれば、ようやく圧政から開放されて自由になるかもしれないって瀬戸際なんだからたまったもんじゃない。

この辺りが、ヒーロー物だからといって万人が納得できるような平和的解決方法なんてないんだよ、やみくもに正義執行すればいいわけじゃないんだよ、というリアルな現在を描いており、世界の警察を名乗るアメリカが、各地の戦争や紛争に対してとっとと介入して収めることのできない政治的、経済的、戦略的なものの核心をついていて皮肉さを感じた。

そんな彼らの確執も拳を交え、腹を割って話すことで和解し、最終戦に突入する。


作品としてみると、単なるヒーロー物だけではなく、現代におけるダークな部分にも焦点を当て、絶対悪をたてながらも多角的な視点で色々な面を見せてくれるのはよかったです。

アクションだけみると、ゴリゴリのCGで、せっかくのドウェイン・ジョンソンの肉弾戦が活かしきれてない気がしてもったいない気はしました。

ブラック・アダムと彼に関わるヒーローも魅力的なキャラが多く、今後、本当に展開していってくれるのであれば期待は大きい。
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