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バビロンのrojoのネタバレレビュー・内容・結末

バビロン(2021年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

(SNSにも同じ内容記載済み)

とにかく、来るぞ来るぞのシーンが多いな。それがとにかく辛いんです。切なくて。
途中でびっくりポイントのワニが出たら、ああこれ後々ワニ使うんだろうなとか。ガラガラヘビ捕まえたら噛まれるんだろうなとか。荷造り終えたか?って行ったら追っ手がいるんだろうなとか。なんだろ~ベタネタじゃないけど、予期させるシーン。常套句が散りばめられてて。
それがジャックの死と、ネリーの死を強調させるというか。
私はジャックに死なないで欲しかった。ジャックは映画の変化を予期していたし、クソ映画でも「助けてやる」って言った彼が格好良かった。落ちぶれてでも映画業界をいつか救うために続けるのかなって思ってた。
でも、ボーイにチップ渡して、部屋に戻って、ドアを開けたままにしてて風呂場が映っててって、ああもうそういうことだよね。違うよ。普通に寝てていいよ。そんなことしないでよ。って思うけど、自殺をします。
やめて、ってすごい思ったけど、あそこでジャックが自殺を選ばなかったらそれこそ「嘘じゃん」ってなるよ。死んで欲しくないのに、我々は彼がバビロンのあのシーンで死ぬことを無意識に望んでいる。そういうシーンだから。
フェイがジャックに死の匂いを感じてそうだったのいいよね。

ネリーが暗闇に消えていくところもそう。薬の飲み過ぎだよ。愛してるって言われたじゃん。愛してる愛してる愛してるって。戻ってくるつもりなのかも、前後不覚なだけかも、だけど、ああ絶対彼女は戻らないだろう。マヌエルの前には現れない。
そして死ぬんだってわかる。
あそこ、暗闇から出てって、光に照らされ、また暗闇に入っていってしまうの切ない。あそこがいちばん心臓ばくばくした。

ゴシップ屋は暗闇でゴキブリのように生き続けるけど、ネリーは生まれついてのスターだから、ゴキブリじゃないから、暗闇では生きられなかったんだろう。

ネリーとマヌエルが最後2人一緒にならなかったの、どうしてだよ;;;;って思うけど、ラ・ラ・ランドの2人も最後は一緒じゃなかったから………
ラ・ラ・ランド あの結末でたいへん満足してるけど、もう1人の私は永遠に「別れるな!!!」って駄々こねてる感覚。し、ラ・ラ・ランドが2人一緒じゃないのに、ネリーとマヌエルがそうなるはずは…ないよな…。
ネリーとマヌエルのテーマが、めちゃラ・ラ・ランドで泣いた。あの音好き。

マヌエルは映画にとにかく関わっていたい人って監督はおっしゃってたけど、マヌエルの映画好きがよくわからなかった。
というのも、「画面の向こうで人は死ぬけど実際は死んでない」って言ってて、実際はエキストラが映画撮影の中亡くなるのを見て呆然としてる。撮影カメラの違いもわからない。あと映画の撮影現場でフルーツ食べて、つまらなそうにしてるとことか。

本人からあんま好きな映画の話は出てこない?のは、まあこの男が映画好きなんですよというのは前提としてあるからあんま気にしなかったけど。
で、彼は映画のセットの一部になりたい。何か大きな流れの一部になりたい。って、ラストシーンで彼は大きな流れの一部になれたから良かったし、
マヌエルは「映画」が好きだったんだなってなった。観ている間は現実から逃れられる。彼が好きだったのは、その画面の裏側にある人達の物語や大変さ現実じゃなく、画面越しに現れてくれるあの別世界 1作品としての「映画」なんだな。
そして、このバビロンの主役は「映画」と言われるように、黒幕も「映画」だった。黒幕って言い方が正しいのかわからないけど。
ラストシーンのマヌエルの涙は、やっぱり関わった人達を思い出してだと思うんだよ。もうこの世にいない人達。ネリーとジャックの新聞の片隅にあった記事も見てると思う。ネリーとジャックは画面の向こうにずっと生きてるけど、マヌエルと一緒だった現実の2人は亡くなってしまった。
あの涙は大切だった人達の死への悲しみと、楽しかったなあ………って気持ちだと解釈している。
楽しかったなあ……って気持ちは、全力を出したけど勝てなかった体育祭の終わりのような、とにかく長い受験期間のような(経験値が少ないからいい表現が浮かばん…)、バビロンはひとつの青春の終わりだと思っているので…。

で、最後の怒涛の映画ラッシュと、それを観る(実際それではないけど、マヌエルと我々が観たものは同じだと思う。)マヌエルの表情は、また映画の狂気に戻された顔だと思う。火をつけられてしまった。映画の狂気に魅せられてしまった。
彼はまた、あの世界に戻っていくと思う。またしても「映画」と目が合ってしまったから。

バビロン 観客体験型だよなあ。あの穴に入っていくところとか。乗車型お化け屋敷じゃんって思った。飲み込まれ方が。タワテラとかに乗る感覚と似てる

(観客のみんながいるから怖くない!)
(いやこれレイトで1人とかだと超怖いな)

伯爵がテンション上がってお披露目してくれる最終階層。いや二階層の方が恐いよ…だいぶ…彼らの人権は…?ってなるけど、伯爵は人権なんて知ったこっちゃないもんな!それも恐いよ!
でも伯爵がげっぷ痰吐き男性を秘書的に据えてるのなんか好き。
伯爵のところ、もっとこう上手くいかなかったかなあって思っちゃう。偽札を用意すな。
伯爵が映画好きって前情報あれば、彼のアイデアを映画化したいとか何とか言って、金は待って貰えたかも知れないし。
伯爵 物語を考える才能はないかもだけど、映画好きは本当っぽいし、ただ、マヌエルも疲弊してて、そもそもあんまおべっかできるタイプでもないしな。
つくづく思うんだけど、マヌエルもだいぶ俳優向きというか、持っているタイプだと思う。そんな上手くいくか?って場面が多すぎる。
あえてこの言い方するけど、やっぱりバビロンも「ただの映画」なんだな。
最後、映画を観ている様々な観客のシーンもあって、そこでまた観客一体型だ!って思った。あれは我々だよ。我々が映ってたよ。
笑ったり泣いたり暗闇でこそこそ批評する我々を飲み込んで映画にしてくれ。好きと言われようが、嫌いと言われようが、全部呑み込んで、バビロンっていう映画にしてくれ。頼む。私のこの大好きって気持ちも、他の方の大嫌いだって気持ちと一緒くたにして「映画」の糧にして、消費してくれ。





しょっちゅう映画で泣く人間なんだけど(※つまらない映画でも泣く)

バビロンは観たとき涙でなくて、1日経った今日サントラ聴いたらボロボロ泣いてしまった。
Finaleがやばすぎる。ジャスティン・ハーウィッツ天才だ。

楽しかった。心臓ばくばくして汗ダラダラで映画館から出てきたのははじめてだった。本当に大好き。切ないよ。

好きなコメディシーンは、エキストラ鎮圧して「凄腕だな」って言われるところです。超笑っちゃったよ。
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