FrankTannock

バビロンのFrankTannockのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.7
圧巻だった。
ハリウッド黄金期の熱狂を今作ほど感覚に訴える形で表現している作品は少ない。
しかし同時に、狂乱の最中にいた人間が潮時を迎え、時代の影に消えていく寂しさも今作は描いている。
映画の上映が終われば現実に引き戻されるように、人々は限りある時間をスターとして生きて、歴史の闇に消えていった。

映画の終盤、光の三原色である青緑、赤紫、黄が画面いっぱいに広がり、およそ100年の歴史がモンタージュされる。
リュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』ジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』から始まった映画の歴史は、
ヒッチコックの『サイコ』やキューブリックの『2001年宇宙の旅』、ゴダールの『ウイークエンド』、ウォシャウスキーの『マトリックス』、キャメロンの『アバター』へ続く。
無音から始まった映画は、音を獲得しカラーになり、70mmフィルムからデジタルへ。
銀幕に光を当てることで浮かび上がる空想の世界。絶え間ない技術革新と夢を追った人たちの足跡が提示される。
そしてその足跡は、市井の人々が映画を求め続ける限り、スクリーンで蘇る。
偉大なものの一部になりたい、あらゆるものを犠牲にしてもなお映画を作り続けた主人公たちの意志がそこにあった気がした。
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