たじたじ

バビロンのたじたじのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.0
初っ端から絵が汚いというか、すっごい下品で『ラ・ラ・ランド』で得たお金を使って壮大に「ザコシ並みに誇張した1920年代のハリウッド」をやってんなあと引いたけど、終盤に全部持ってかれた。

無駄なエログロは下品でしかないと思ったけど、鑑賞後の今では、無声映画の興隆と衰退を強く対比させるために使われたモチーフなのかなと思う。それでもドラッグ・セックスのオンパレードは見る人を選ぶけど。

ブラッド・ピットは本当にその時代にいた俳優みたいだし還暦寸前とは思えない鍛えた体だし、マーゴット・ロビーは可愛いのにくそ下品で一時期はもてはやされて落ちぶれた女優を見事に演じ切ってるし、ディエゴ・カルバは目が鋭くてかっこいい。トビー・マグワイアは目がもう完全にイッてて怖すぎ。

映画が無声から有声に変わって、それまで無声映画で活躍してた人の声を聞いてカエル声だなんだの揶揄されるのは、現代において漫画がアニメ化されて好きなキャラの声が思ってたのと違うかったときに思う感情と似てるのかなと個人的に思った。

それだけ無声映画からトーキー映画への変化は革命的で、観客からすれば歓迎しかない変化だったわけだけど、制作側にとってはなかなかの苦労があったのを知れたのは興味深かった。

スターはあくまでも一時的だからスターなのであって、いつまでもそれに縋るのは違う。引き際が大事。そういうメッセージ性があるのかはわからないけど、デイミアン・チャゼルがハリウッド映画が大好きなのはよく伝わった。

体は死んでも映画の中で蘇る。何度だって夢の世界を体験できる。映画の根源的な素晴らしさを思い知らされるラストシーンは非常に印象的だった。
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