三樹夫

アンテベラムの三樹夫のネタバレレビュー・内容・結末

アンテベラム(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

予備知識ほぼゼロぐらいで観たので、これはこういう話なのかなという思い込みを利用したツイストがいつくかあって驚いたのと素直に楽しかった。南北戦争時代の話かと思っていたら、コール音が鳴り現代の話へというので驚き、過去の主人公と現代の主人公が何らかの形でつながる話なのかなと思っていたら、時系列的には現代パートの後に誘拐され黒人奴隷制を再現した綿花プランテーションに誘拐されてきたというので驚く。他にも綿花プランテーションパートでスマホ使いだしたのも驚いたけど。
現代パートで主人公が腰のあたり(綿花プランテーションパートで焼き鏝押し付けられた部分)をさするカットを入れることで、綿花プランテーションパートは過去で、過去のひどい出来事が現代に侵食してくる話なのかなと、思い込みを利用したツイストに向けてのミスリードがなされている。
小屋の中でドアの所に何か塗っているのと床がきしまない部分を踏んで部屋移動しているの観てて何してるのかと思ったが、最終的に脱出のための準備をしていたのかと判明する快感がある。また脱出時にブリッジで部屋を移動していたのも、現代パートでヨガやっていたのでそれを活かしたという前振りがなされていて、面白い作りの映画だなと思った。

綿花プランテーションに誘拐されてくるのはおそらく主人公のような人種問題とか人権について発言するような人たちが主であろう。それを綿花プランテーションにいるような連中は面白く思っていない。連中は誘拐されてきた人たちより、おそらく学歴低く収入も低いというような設定なり裏設定であると思う。まあ学歴収入にかかわらずすべてにおいて最低な連中であるが。主人公みたいな人に発言されることで自分の肩身が狭くなるというのと、すべてにおいてあの連中より上だけど、本来は自分より下のはずの黒人を支配屈服させたいという歪んだ欲望で出来た気持ち悪い逃避場所があの疑似南北戦争時代の綿花プランテーション。
この映画は純然たるホラー映画で、特に黒人にとって身に迫る恐怖であると思う。綿花プランテーションの連中みたいな奴がどんだけいるかわからんというのと、また何かあれば奴隷制みたいな時代に逆戻りするかわからんという怖さがあると思う。日本人が『光る風』読んで下手したらこんな世界になるんじゃみたいな、こんなものはフィクションと言い切れない現実を含む恐怖がある。
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