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星の子のmarohideのレビュー・感想・評価

星の子(2020年製作の映画)
3.5
 良かった。

 新興宗教を信仰する家族の話でありながら、宗教そのものは要素の一つでしかない。物語の合間合間に訪れる気まずさ、居心地の悪さ、不快感。これらはどれも、自分にも覚えがある普遍的なものである。

 宗教施設の集会に行くシーンで感じた居心地の悪さは、かつて自分も学校の合宿や宿泊行事で漠然と感じていた不安感、気味の悪さと似ていた。
 自分と同世代の友人らと同じバスに乗り、皆で焼きそばを作って食べ、寝泊まりし、催しに出る。そのような中で感じる居心地の悪さだ。
 知り合いと過ごせる楽しさと、集団生活の不快感が奇妙に同居したあの雰囲気。プログラムに則った生活を送るうちに、いつの間にか自分の範疇を超えていく感覚。不意になんでもないことが不安になる瞬間。
 あの説明のできない気色の悪さをどこかで知っている気がする。

 教室で教師によって晒しあげにされたときの混乱や緊張感。焦り。恐れ。やはりこれらも知っている。
 直後の級友との会話は出色だった。現実の生活の中には、純度100%の悲劇や喜劇の場面というのはほとんど存在しえない。これほど手酷く傷つけられながらも、男子のくだらない発言に思わず笑わずにはいられない、その締まらなさ。こういったシーンに、映画が我々の生活と地続きであることを感じさせられた。

 このような題材を、隔絶したものとせずに取り扱う本作の姿勢は真摯だと感じたし、そのような表現を実現させた俳優陣の演技はどれも見事だったと思う。
 演出に関しては、いかにも最近の邦画という感じがした。もっとも、それほど最近の邦画を知っているというわけでもないのですが。
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